相続・空き家


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空き家が「特定空家等」になると何が起きるのか。勧告・命令・行政代執行の流れ

実家の近所に住む方から、電話がかかってくる。

「お宅の庭木が、うちの塀を越えてきていますよ」。「屋根の瓦が、少しずれているみたいですけど」。

誰も住まなくなった家の状態を、そういう連絡で初めて知る。そういう方は、少なくありません。

気にはなっていた。でも、今すぐ倒れそうなわけでもないし、まだ大丈夫だろう。そう思いながら、そのままになっていた。実際に大きな被害が出ていない段階で、空き家の管理を優先するのは難しいものです。自宅から遠ければ、様子を見に行くだけでも時間がかかります。修理や庭木の手入れを頼むにも、どこへ相談すればよいのか分からないこともあります。

責められることでは、ありません。

ただ、空き家を管理しない状態が続くと、市区町村から「特定空家等」と判断されることがあります。

特定空家等とは、単に古い家や、誰も住んでいない家のことではありません。

そのまま放置すれば、倒壊などにより著しく危険になるおそれがある状態。ごみや害虫などにより、衛生上著しく有害になるおそれがある状態。適切な管理が行われておらず、周辺の景観を著しく損なっている状態。そのほか、周辺の生活環境を守るために、そのまま放置することが不適切な状態。

このような空き家について、建物の状態や周辺への影響を調べたうえで、市区町村が判断します。

こう聞くと、うちの家も、すぐに解体されるのではないか。そう不安になるかもしれません。

特定空家等と判断されたからといって、通常は、いきなり建物を解体されるわけではありません。

市区町村は、所有者に対して、まず必要な対応を求めます。伸びた庭木を切る。落ちそうな瓦を直す。壊れた外壁を補修する。ごみを片付ける。建物全体を建て替えたり、すぐに解体したりしなければならないとは限りません。問題になっているところを改善できれば、その後の手続きへ進まずに済むことがあります。

それでも改善されない場合は、助言や指導に続いて「勧告」が行われることがあります。

所有者にとって大きな影響が出るのは、この勧告を受けた段階です。

住宅が建っている土地には、固定資産税の負担を軽くする「住宅用地特例」があります。固定資産税では、住宅一戸につき200平方メートルまでの小規模住宅用地は、課税標準額が価格の6分の1になります。200平方メートルを超える一般住宅用地の部分は、価格の3分の1になります。

ところが、特定空家等について市区町村から勧告を受けると、その敷地は住宅用地特例の対象から外れます。

よく「固定資産税が6倍になる」と言われますが、すべてのケースで納税額がそのまま6倍になるわけではありません。土地の面積、評価額、自治体による負担調整、都市計画税の有無などによって、実際の増加額は変わります。ただし、それまで受けていた特例が外れるため、土地の税負担が大きくなる可能性があることは確かです。

勧告を受けても改善されない場合は、さらに「命令」へ進むことがあります。命令が出される前には、所有者が意見を述べる機会などが設けられます。命令が出されると、その内容が公示され、空き家の場所に標識が設置されることもあります。

正当な理由なく命令に従わなかった場合は、50万円以下の過料に処されることがあります。

それでも必要な対応が行われなければ、最終的には行政代執行に進むことがあります。行政代執行とは、所有者が行うべき修理や除却などを、行政が代わって行うことです。行政が行ったからといって、その費用を自治体が負担してくれるわけではありません。解体費用などは、原則として所有者に請求されます。所有者を確知できない場合には、略式代執行が行われることもあります。

また、2023年12月13日に施行された改正空家法では、倒壊などにより周囲へ危険が迫っている緊急時に、命令などの一部の手続きを経ずに代執行できる制度も設けられました。

ただ、ここまで進むのは、管理されていない状態が続き、周辺への危険や悪影響が大きくなっている場合です。瓦が一枚ずれているだけで、直ちに行政代執行まで進むという話ではありません。建物の状態、周囲への影響、所有者の対応などを見ながら、市区町村が必要な措置を判断します。

もう一つ、知っておきたいのが「管理不全空家等」です。

2023年の法改正により、特定空家等になる前の段階から、市区町村が対応できるようになりました。管理不全空家等とは、適切な管理が行われておらず、このまま放置すれば特定空家等になるおそれがある空き家です。屋根や外壁の一部が傷んでいる。排水設備が壊れている。庭木が伸び続けている。

現時点では特定空家等とまでは判断されなくても、管理されない状態が続けば、周辺へ影響する可能性があります。そのような空き家に対して、市区町村は指導を行い、改善されない場合には勧告できるようになりました。管理不全空家等についても、勧告を受けると、その土地は固定資産税等の住宅用地特例の対象から外れます。

つまり、特定空家等に指定されていないから、まだ何もしなくてよい。そうとは言い切れなくなっています。

とはいえ、空き家が古くなっているからといって、慌てて売却や解体を決める必要はありません。

まず確認したいのは、現在の状態です。屋根や外壁に、落下しそうな部分はないか。雨どいや窓ガラスが壊れていないか。庭木や雑草が、道路や隣の敷地まではみ出していないか。ごみが置かれたり、害虫や動物が入り込んだりしていないか。門や玄関の鍵が壊れ、防犯上の問題が起きていないか。雨漏りや水漏れが起きていないか。近隣や市区町村から、連絡や通知が届いていないか。

自分で現地へ行けない場合は、近くに住む親族や、現地を確認できる不動産会社などへ頼む方法もあります。写真を撮ってもらうだけでも、何から手を付けるべきかを考えやすくなります。

すぐにできる補修で状態を保てるのか。定期的な管理を頼んで残すのか。必要なところを修理して貸すのか。今後も使う予定がなければ売却するのか。建物の状態が悪ければ、解体も含めて考えるのか。

どの方法がよいかは、建物の状態、場所、所有者や家族の考えによって変わります。

大切なのは、行政から勧告や命令を受けてから慌てて動くのではなく、まだ選べる方法が残っているうちに、現在の状態を確認することです。

市区町村から連絡が届いている場合も、そのままにしないでください。書かれている内容が分からない場合は、担当部署へ連絡し、どの部分を、いつまでに、どの程度改善する必要があるのかを確認します。すべてを一度に直すことが難しい場合でも、今後の対応について相談できることがあります。

特定空家等になるかどうかを、一人で判断する必要はありません。

寝屋川市や枚方市でも、近所の方に言われて初めて庭木や瓦のことを知った、というご相談をいただきます。皆さん、放っておこうと思っていたわけではなく、きっかけがないまま時間が過ぎてしまった、という方がほとんどです。

庭木が伸びている。瓦や外壁の傷みが気になる。遠方にあり、長い間見に行けていない。

その段階で一度状態を確認し、貸す、残す、売る、解体するという方法を整理しておく。それだけで、次に何をすればよいのかが見えてきます。

売却を前提にお話をうかがうわけではありません。まず現地がどうなっているのかを確認したうえで、どのような進め方が考えられるのかを一緒に整理します。

まだ何も決めていない段階でも大丈夫です。

※この記事は2026年8月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の取り扱いについては、自治体の担当窓口・専門家にご確認ください。

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親名義のままの実家。相続登記は2027年3月31日までに

「この家の名義は、今どなたになっていますか」

実家のことでご相談をいただいたとき、私はまずそこを確認します。すぐに答えられる方は、そう多くありません。調べてみると、亡くなった親の名前のまま。ときには、その前の祖父の名前が残っていることもあります。

そういう方は、少なくありません。

以前は、相続登記をするかどうかは相続人の判断に任されていました。「そのうち手続きをしよう」「売ることになったら名義を変えよう」。そう考えて後回しにしてきた方も多いと思います。

責められることでは、ありません。以前は義務ではなかったのですから、すぐに手続きをしなかったとしても、不自然なことではありませんでした。

ただ、2024年4月1日から制度が変わりました。

相続によって不動産を取得した相続人は、自分が相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければならなくなりました。遺産分割の話し合いで取得する人が決まった場合は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容に沿った登記をすることになります。

正当な理由がないまま申請しなかった場合は、10万円以下の過料の対象になることがあります。

こう聞くと、うちの家も急がなければ、と思われるかもしれません。

ここで一つ、知っておいていただきたいことがあります。

この義務化は、2024年4月1日より後に起きた相続だけが対象ではありません。それより前に亡くなった方の不動産も、相続登記がされていなければ対象になります。

施行前に始まった相続については、2024年4月1日から3年間の猶予期間が設けられています。つまり、以前から名義を変えていない不動産は、原則として2027年3月31日までに対応することになります。

何十年も前に親や祖父母が亡くなっているから、自分には関係がない。そういうことではありません。

むしろ、長いあいだ名義を変えていない不動産ほど、注意が必要です。

例えば、親が亡くなった時点では、相続人が配偶者と子どもだけだった。そのまま登記をしない間に、その相続人の一人が亡くなった。すると今度は、その方の配偶者や子どもが相続人になります。

こうして相続が重なると、話し合いが必要な人が少しずつ増えていきます。

相続人の中に、ほとんど会ったことがない方や、連絡先が分からない方が含まれることもあります。

つまり相続登記は、時間がたてば自然に簡単になるものではありません。時間がたつほど集める戸籍の範囲が広がり、相続人の確認や話し合いに時間がかかることがあります。

とはいえ、慌てて誰か一人の名義に決める必要はありません。

まず確認するのは、今どうなっているか、です。

不動産の名義は誰になっているのか。名義人が亡くなったのはいつなのか。遺言書はあるのか。相続人は何人いるのか。遺産分割の話し合いは済んでいるのか。

ここまで分かると、次に何をすればよいのかが見えてきます。

相続登記では、一般的に、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集めて相続人を確認します。兄弟姉妹が相続人になる場合や、相続が何度も重なっている場合は、さらに多くの戸籍が必要になることがあります。

相続人が多い。疎遠になっている親族がいる。遺産分割の話し合いがまとまっていない。遺言書の内容について意見が分かれている。

そのような事情があれば、手続きに時間がかかるのは珍しいことではありません。

期限までに遺産分割をまとめて正式な相続登記を終えることが難しい。そういう場合のために、「相続人申告登記」という制度があります。

これは、自分が不動産の名義人の相続人であることを法務局へ申し出る手続きです。相続人全員でそろって行う必要はなく、相続人の一人が単独で申し出ることもできます。登録免許税もかかりません。

この手続きを期限内にしておけば、申し出た相続人については、相続登記の申請義務を果たしたことになります。

ただし、これで終わりではありません。

相続人申告登記は、不動産の名義を正式に相続人へ変更する手続きではありません。誰がその家や土地を取得するのかを確定するものでもありません。ですから、家を売却したり、金融機関の担保に入れたりする場合には、あらためて正式な相続登記が必要になります。

また、相続人申告登記をした後で遺産分割が成立した場合は、不動産を取得した方が、その成立日から3年以内に、内容を反映した登記を申請することになります。

今回の制度は、「すぐに売りなさい」「早く誰か一人の名義に決めなさい」という制度ではありません。

名義人が亡くなったまま、誰が管理し、誰が責任を負うのか分からない状態を、長いあいだそのままにしないための制度です。

だからこそ、最初にすることは、家を売るか残すかを決めることではありません。

その家の名義と相続の状態を確認する。相続登記まで進められるのか。遺産分割の話し合いが必要なのか。期限までにまとまりそうになければ、相続人申告登記を使うのか。

今の状況が分かれば、進める順番も見えてきます。

一人で戸籍を集めたり相続人を調べたりするのが難しいときは、司法書士に相談する方法があります。司法書士は、登記の申請だけでなく、必要な戸籍の収集や書類の作成についても相談できる専門家です。

ここは正直にお伝えしておきます。不動産会社が、司法書士に代わって相続登記の申請書を作成したり、登記を代理したりすることはできません。

私どもができるのは、その手前の整理です。家を売る、貸す、そのまま残す。どの道があるのかを一緒に見たうえで、相続登記が必要であれば司法書士と連携して進めます。

寝屋川市や枚方市でも、名義が親のままになっている家のご相談はよくいただきます。皆さん、放っておいたわけではなく、きっかけがないまま時間が過ぎてしまった、という方がほとんどです。

家を売るかどうかは、まだ決まっていなくて構いません。

今の名義がどうなっているのか。相続人は誰なのか。何から確認すればよいのか。まずは、そこからで大丈夫です。

2027年3月31日の期限が近づいてから動き始めると、戸籍の収集や相続人同士の話し合いが間に合わないこともあります。

名義のことが気になっている、その段階で、状況だけでも確認しておく。それだけで、ずいぶん見通しが立ちます。

一人で抱え込まなくて大丈夫です。

※この記事は2026年8月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の取り扱いについては、法務局・司法書士にご確認ください。

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相続空き家の3,000万円控除。「3年以内」の数え方と、控除額が変わる場合

相続した実家をどうするか。ご家族で話していると、決まって出てくる言葉があります。

「3年以内に売れば、税金がかからないらしい」

たしかに、そういう制度はあります。ただ、その「3年以内」の数え方が、思っているのと少し違うことがあります。

相続した実家を売るとき、「3,000万円まで税金がかからない制度があるらしい」と聞いたことがある方は多いと思います。正式には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。要件を満たせば、売却で得た利益(譲渡所得)から最高3,000万円を差し引ける制度です。

ただ、「3年以内に売ればいい」くらいの理解で止まっている方も少なくありません。実際には、期限の数え方や、控除額そのものが、思っているのと違うことがあります。

まず、期限です。

「相続から3年以内」と言われることが多いのですが、正確には「相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」です。

例えば、2026年1月に相続が始まった場合、3年を経過する日は2029年1月ごろです。その日が属する年、つまり2029年12月31日が期限になります。相続開始から数えると、実際には4年近くの猶予があることになります。

一方、2026年12月に相続が始まった場合も、3年を経過する日が属する年は同じ2029年です。期限は同じ2029年12月31日ですが、相続開始からの期間で見ると、猶予は3年程度しかありません。

相続が始まった月が1月に近いか、12月に近いかで、実質的に使える期間の長さが変わってきます。

次に、控除額です。

以前は、相続人が何人いても、それぞれが最高3,000万円の控除を受けることができました。ところが、令和6年1月1日以後の譲渡からは、被相続人居住用家屋とその敷地等を相続または遺贈により取得した相続人が3人以上いる場合、一人あたりの控除額は最高2,000万円になります。

相続人が2人以下であれば、これまでどおり一人あたり最高3,000万円です。兄弟姉妹で分けて相続したようなケースでは、この人数の要件を見落とさないようにする必要があります。

耐震改修や取り壊しのタイミングについても、誤解が残っていることがあります。

この特例を使うには、家屋が一定の耐震基準を満たしている状態で売却するか、家屋を取り壊して敷地を売却することが基本です。以前は、売却する前に、売主自身が耐震改修や取り壊しを済ませておく必要がありました。

令和6年1月1日以後の譲渡からは、この要件が緩和されています。売却したあとでも、譲渡した年の翌年2月15日までに、買主によって耐震改修や取り壊しが行われた場合は、一定の要件のもとで特例の対象になります。

つまり、売却の前に自分で工事や解体を済ませておかなくても、この特例を使える余地が広がっています。

対象になる家屋にも条件があります。

昭和56年5月31日以前に建築されたこと。区分所有建物、いわゆるマンションではないこと。被相続人が、相続の直前に一人で住んでいたことです。

ただし、要介護認定などを受けて老人ホーム等に入所していた場合でも、一定の要件を満たせば対象になることがあります。老人ホームに入っていたからといって、最初から対象外だと決めつけない方がよいと思います。

譲渡価額が1億円を超える場合や、「特別の関係がある人」へ売却する場合も、この特例の対象外です。なお、「特別の関係がある人」には、親子や夫婦のほか、生計を一にする親族なども含まれます。

そして、制度自体にも期限があります。

この特例は、令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象です。これまでも適用期限が延長されてきた経緯がありますが、今後どうなるかは、その時点の制度を確認する必要があります。

特例を受けるには、確定申告の際に「被相続人居住用家屋等確認書」を添付しなければなりません。この確認書は、家屋がある市区町村へ申請して交付を受けるものです。

市区町村での確認や必要書類の準備に時間がかかることもあるため、確定申告の直前ではなく、早めに申請しておいた方がよい書類です。

3,000万円という金額の大きさから、「使えるはず」と思い込んでしまいがちですが、期限の数え方、相続人の人数、家屋の要件など、確認しておくべき点は一つではありません。

とはいえ、これを全部ご自身で確かめないといけない、ということでもありません。

当社では、相続した空き家のご相談を受ける際、この特例が使えるかどうかも含めて、司法書士や税理士と連携しながら整理しています。制度の詳しい適用可否は、最終的に税理士の判断が必要になります。

売ると決めていない段階でも大丈夫です。

期限のある制度ですので、売却を考え始めた早い段階で、いまの状況と使えそうな制度を一度確認しておく。それだけでも、その後の進め方が見えてきます。

※この記事は2026年8月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の取り扱いについては、税務署・税理士にご確認ください。

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実家の片付けは、捨てることから始めない。先に確認しておきたいこと

押し入れの戸を開ける。段ボールと、紙袋と、見覚えのない箱。とりあえず一つ持ち上げてみて、また元に戻す。

実家の片付けは、たいていここから始まって、ここで止まります。

親が老人ホームに入所した。相続で実家を引き継いだ。そんなとき、最初に考えるのが実家の片付けです。

ただ、実家の片付けは、いきなり荷物を捨てることから始めない方がいいと思っています。家族から見れば不要に見えるものでも、親にとっては必要なものかもしれません。思い出のあるものかもしれません。あとで必要になる大切な書類や貴重品が、荷物の中に紛れていることもあります。

だから、片付けを始める前に、確認しておきたいことがいくつかあります。

まず確認したいのは、これから親が使うものです。

衣服、下着、靴、毛布、タオル。写真や、思い出の品。入所したあとに、「あの服を持ってきてほしい」「いつも使っていた毛布がほしい」「写真の入った箱を見たい」と言われることがあります。そのときに、「もう捨てた」と言わなくて済むように、片付ける前に親と話しておくことが大切です。

夏に片付けをするなら、冬服をどれだけ残すのか。冬に片付けをするなら、夏服をどれだけ残すのか。できるだけ親本人に確認しながら、残すものと処分するものを分けていく。その方が、あとで揉めにくくなります。

次に気をつけたいのは、勝手に処分しないことです。

実家の片付けで一番揉めやすいのが、ここです。家族から見ると、もう使わないように見えるものがあります。古い服。使っていない食器。何年も開けていない箱。古い手紙。写真。でも、本人にとっては大切なものかもしれません。

片付ける側は、良かれと思って処分します。でも親からすれば、「勝手に捨てられた」と感じることがあります。

全部を確認するのは難しいかもしれません。それでも、迷うものは一度残しておく。判断に困るものは、親に確認する。このひと手間が、あとでの後悔を減らします。

それから、現金や大切なものの保管場所も、早めに確認しておきたいところです。

通帳、銀行印、実印、印鑑登録証。権利証や登記識別情報。保険証券、年金関係の書類。そして現金。こうしたものは、あとで必ず必要になります。「そのうち分かるだろう」と思っていると、いざ必要になったときに見つからず、家中を探すことになります。

親と話ができるうちに、どこに保管しているのかを確認しておく。それだけでも、その後の手続きはずいぶん違います。もちろん、防犯のためにも、その情報は家族の中で適切に管理することが大切です。

そして、片付けそのものは、できるときに少しずつ進めるのがいいと思っています。

長年暮らした家には、想像以上に物があります。押し入れ、タンス、納戸、物置、台所、仏壇まわり。一気に片付けようとすると、体力的にも精神的にも負担が大きくなります。急ぐと、大切なものまで処分してしまうことにもなりかねません。

親と話せるうちに確認する。思い出話をしながら、残すものと処分するものを分けていく。できるときに、少しずつ進める。その方が、あとで処分するときの気持ちも、少し楽になります。

こうして片付けを進めていくと、いつか「この家をどうしようか」と考えることになります。売る、貸す、そのまま残す。いろいろな選択肢があります。でも、その答えを急いで出す必要はありません。

まずは、親がこれから必要なものを整理すること。大切な書類や貴重品の場所を確認すること。そして、親と話ができるうちに、一緒に思い出を振り返りながら片付けを進めること。

実家の片付けは、不動産の問題である前に、家族の時間でもあります。

だから、家をどうするかを考える前に、まずは親と話をする時間を大切にしてほしいと思っています。実家の片付けは、荷物を減らす作業だけではありません。親のこれからの暮らしを考えること。大切なものを確認すること。家族の思い出を整理すること。そういう時間でもあります。

勝手に処分すると、揉めるもとになります。でも、親と相談できるうちに少しずつ整理しておけば、あとで困ることは減らせます。

「あれを持ってきてほしい」。そう言われたときに、「もう捨てた」と言わなくて済むように。できるときに、できるところから。まずは、親と話すことから始めてみてください。

そのうえで、家をどうするか。売るのか、貸すのか、そのまま残すのか。そこで迷ったときは、一人で抱え込まないでほしいと思います。

私は、相続した実家や空き家、遠方の不動産の相談を、これまで数多く受けてきました。すぐに売る話をするわけではありません。まずは、今どういう状況で、何に困っているのかを聞くところから始めます。

片付けも、家のことも、急いで答えを出す必要はありません。でも、困ったときに相談できる相手がいる。それだけで、気持ちは少し楽になります。

片付けの途中でも、家をどうするか決めていなくても大丈夫です。

いま何が気がかりなのか。そこを一度言葉にしてみるところから、で構いません。

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誰も住んでいない実家。持ち続けている間にかかるお金のこと

「そのうち、どうするか決めよう」。兄弟でそう話したのは、もう何年前だったでしょうか。

あれから、実家は誰も住まないままです。話し合ったきり、答えが出ないまま、時間だけが過ぎていく。そういう方は、少なくありません。

片づけようとしても、親の荷物の前で手が止まって、また閉めてしまう。気持ちが追いつかないうちに、月日が経っていきます。どうにかしなきゃと思いながら、何年も過ぎてしまう。これは、よくあることです。

責められることでは、ありません。実家を片づけるというのは、それくらい重たいことです。

ただ、その間にも、静かに続いていることがあります。その家を持ち続けるための費用です。

誰も住んでいなくても、固定資産税は毎年かかります。誰かが使っているかどうかにかかわらず、その家と土地を持っている限り、毎年の負担は続きます。

そのうえ、手入れが行き届かず「特定空家」に指定されると、土地にかかる税の軽減が外れて、負担が重くなることもあります。人が住まなくなった家ほど、傷みや草に気づきにくくなります。その結果として、税の負担まで変わってくることがあるのです。

さらに、頭の片隅に置いておいてほしい動きが、一つあります。

使われていない空き家に対して、市が独自に税をかけようという動きが出てきました。すでに導入を決めた市もありますし、条例案が議会に出されている市もあります。私の会社がある大阪の寝屋川市も、そのひとつです。この動きについては、別の記事で詳しく書いていますので、気になる方はそちらをご覧いただければと思います。

一つの市だけの話というより、使われていない家を持ち続けることに、これから少しずつコストがかかっていく。そういう流れになってきました。

こう聞くと、急いで売らないと、と不安になるかもしれません。でも、慌てなくて大丈夫です。

古くて傷んでいる家でも、売れます。古家付きの土地として出すこともできますし、現状のまま中古住宅として売り出すこともできます。解体して更地にしないと、修繕しないと売れない、というわけではありません。

ここは誤解されやすいところです。まず何百万円もかけて解体や修繕をしなければ話が始まらない、と思い込んで動けなくなっている方は、少なくありません。

それでも、今日明日で決める必要はありません。

まずは、自分の家がいまどういう状態にあるのかを知ること。いくらで売れそうか、貸せるのか、税金はこれからどう変わるのか。そこが見えてくるだけで、気持ちはずいぶん軽くなります。

一人で抱え込まなくて大丈夫です。同じように実家のことで悩んでこられた方を、これまで何人も見てきました。まずは、不動産や相続にくわしい人に、いまの状況を話してみる。それだけでも、ずいぶん見通しが立ちます。動くかどうかは、それから決めればいいんです。

売る、貸す、そのまま持ち続ける。どれを選ぶにしても、材料がないままでは決められません。

まだ何も決めていない段階でも大丈夫です。いまの状態を一度整理してみる。そこから始めてみてください。

※この記事は2026年8月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の取り扱いについては、自治体の担当窓口にご確認ください。

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