相続・空き家


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親の家の売却と本人の意思確認。判断が難しくなったときの成年後見

親が老人ホームへ入り、実家が空いた。家族で話しているうちに、誰も住まないなら売った方がいいのでは、という話になる。よくある流れだと思います。

ただ、ここで先に確かめておきたいことがあります。その家の名義は親のままで、売ると決められるのは親本人だということです。

親自身が元気で、もうこの家には戻らないから売ろうと考えているのであれば、元気なうちに売却して現金に換えておくのも一つの方法です。

誰も住まない家でも、固定資産税はかかります。庭があれば草も伸びます。建物も使わなければ少しずつ傷んでいきます。

それなら、自宅を売却して現金に換え、老人ホームの毎月の費用に充てることもできます。十分なお金が残れば、元気なうちに旅行へ行ったり、好きなことに使ったりすることもできます。

私は、それも親のお金の使い方だと思います。子どもに家を残すことだけが、必ずしも正解ではありません。

ところが、売却を考える時期が遅くなると、話が少し変わってきます。親に認知症の症状が出てきた場合です。

ここで大事なのは、認知症だから売れない、と単純に考えることではありません。大切なのは、親本人が自宅を売却することを理解し、自分の意思で判断できる状態なのかどうかです。

不動産は親のものです。子どもたちがもう家には戻らないのだから売ろうと決めても、親の家を子どもの判断だけで売ることはできません。

私たちも、売却を預かる時点で本人と会って話をします。この家をどうしたいのか。売ったお金をどうするのか。ご本人の口から聞かせていただきます。

そのうえで、最後にもう一度確認するのが、所有権移転登記を担当する司法書士です。高齢の方や認知症の症状が見られる場合は、より慎重に本人の意思や判断能力を確認することになります。

普段は普通に会話ができていても、不動産を売却するという大きな財産処分について、本人が内容を理解して判断できる状態なのか。そこが重要になります。

売却の話を進め、買主が見つかってから、司法書士による本人確認の段階で、この状態では登記を進めることが難しいとなれば、そのまま決済へ進めなくなることもあります。

もし本人に売買契約を判断する能力がなく、回復も難しい場合には、成年後見制度を利用して売却を進めることが選択肢になります。

ただし、それなら子どもの誰かが後見人になればいい、と簡単に考えられるものでもありません。

成年後見人は、家族が希望した人をそのまま選べる制度ではありません。家庭裁判所が本人にとって誰が適任なのかを考えて選任します。親族が選ばれる場合もあれば、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれる場合もあります。

そして、後見人が決まれば自由に家を売れるわけでもありません。本人が住んでいた家を売るときは、後見人であっても家庭裁判所の許可が必要になります。

成年後見は、家を売るためだけの手続きではありません。財産管理や生活に関する支援を継続して行う制度です。

なお、成年後見の申立てや手続きそのものは、司法書士や弁護士の領域です。私たち不動産会社が代わりに進められるものではありません。制度の細かい取り扱いや、ご家族の場合に何が必要になるのかも、そちらで確認していただくことになります。

また、親族の一人が成年後見人になることで、別の問題が起こることもあります。

親の通帳を預かり、老人ホームの費用や病院代、生活に必要なお金を支払う。本人のために使っているお金であっても、ほかの兄弟から見れば、その内容が分かりにくいことがあります。

すると、本当に親のために使ったのか、自分のために使っていないか、と疑われることがあります。

実際にはきちんと親のために使っていても、お金を管理している人だけが詳しい状況を知っていることで、兄弟の間に疑いが生まれることがあります。管理している側にも、疑いを持つ側にも、それぞれの事情があります。どちらかが悪いという話ではありません。

親のために始めた成年後見が、家族でもめる火種になってしまうこともあります。

つまり、親の家を売るには、本人が自分で決めるか、家庭裁判所を通すか。この二つしかありません。

親が元気なうちであれば、こうした状況を避けられる可能性があります。

この家はもう使わないから売る。しばらく残しておきたい。売ったお金は老人ホームの費用に使いたい。本人が自分の意思で話をし、自分で決めることができます。

売却して現金に換えれば、そのお金を自分の生活のために使うこともできます。家の管理や固定資産税を気にする必要もなくなります。

一方で、まだ元気だから、そのうち考えればいいと何年も先送りしている間に、親の状態が変わることがあります。そのときになって家族がやっぱり売ろうと思っても、本人の意思確認が難しくなれば、簡単には進められなくなります。

同じ実家を売るという話でも、親が元気なうちに考えるのと、判断能力が低下してから考えるのとでは、手続きも家族の負担も大きく変わる可能性があります。

だから、老人ホームへ入ったからといって、すぐに家を売らなければならないわけではありません。相続まで残しておくという選択肢もあります。慌てて決める必要はありません。

ただ、その前に一度、この家、これからどうしたい、と親に聞いてみてください。売るのか。残すのか。誰かが使うのか。売ったお金をどうするのか。親が元気なうちなら、その答えを本人から聞くことができます。

査定は、そのあとでも間に合います。まず本人の気持ちを聞いて、それから家をどうするかを考える。順番はそれでいいと思います。

聞いてはみたけれど、どこから手をつければいいのか分からない、ということもあると思います。そのときは、家の状態や売れる見込みといった不動産の側の話から整理するお手伝いができます。司法書士などの専門家に相談した方がよい場面では、そのこともお伝えします。

※この記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の取り扱いについては、司法書士などの専門家にご確認ください。

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誰も住んでいない空き家の1年分の費用を書き出してみる

草刈りを頼んだときの領収書。固定資産税の納付書。見に行ったときのガソリン代。空き家に使ったお金は、別々の時期に少しずつ出ていくので、1年でいくらになっているのかが分かりにくいものです。

誰も住んでいない家。使っていないのだから、それほどお金はかからないと思っている方もいるかもしれません。

でも、空き家は住んでいなくてもお金がかかります。固定資産税は毎年かかります。庭があれば草は伸び、木の枝も大きくなります。遠方にある家なら、様子を見に行くだけでも交通費がかかります。

一つひとつを見ると、それほど大きな金額ではないように感じるかもしれません。ところが、1年間で合計してみると、思っていたより大きな数字になっていることがあります。

たとえば、こういう家があったとします。固定資産税などで年間10万円。草刈りや庭木の剪定を業者へ頼んで年間5万円。火災保険、最低限残している電気や水道、家を見に行くための交通費などを合わせて年間5万円。これで年間20万円です。

もちろん、これは一例です。固定資産税も草刈りの費用も家によって違いますので、どの家でもこの金額になるという話ではありません。庭が広かったり、遠方にある家だったり、空き家管理を業者へ依頼したりすれば、費用はもっと増えます。マンションなら、誰も住んでいなくても管理費や修繕積立金の支払いは続きます。反対に、これより少なくおさまる家もあります。

それでも、一度計算してみてほしいと思います。

この空き家に、1年間でいくら使っているだろう。

固定資産税だけを見ていると、それほど負担を感じないかもしれません。でも、草刈り、剪定、保険、光熱費、交通費、修繕費まで入れていくと、思っていた以上の金額になることがあります。

1年分の費用を書き出す表を、チェックシートにまとめました。登録や入力は必要ありません。
「空き家の管理・費用チェックシート」

そして、空き家の費用で気をつけたいのは、毎年決まって出ていくお金だけではありません。

久しぶりに見に行ったら、雨漏りしていた。台風で屋根の一部が傷んでいた。給湯器や配管から水が漏れていた。庭木の枝が隣の家まで伸びていた。

誰かが住んでいれば早く気付けることでも、空き家では発見が遅くなることがあります。

国も、空き家は定期的に点検し、通気や換気、通水、清掃などを行うことが必要だという指針を示しています。国土交通省の空き家対策のページには、所有者向けの「空き家管理チェックリスト」も用意されています。

つまり、空き家を持ち続けるのであれば、何もしなくていいわけではありません。お金を払いながら、管理も続ける必要があります。

仮に年間20万円かかっている空き家であれば、5年間で100万円です。年間30万円なら150万円。10年なら200万円、300万円という計算になります。これも、あくまで計算の例です。ご自宅の金額は、実際に払っているもので計算してみてください。

その5年間、家を使う予定があるのであれば、それでもいいと思います。数年後に自分が住む。子どもが住む。将来、何かに使う予定がある。そういう理由があるのであれば、維持費を払って残しておくことにも意味があります。

でも、とりあえず置いている。売るのも面倒だからそのまま。親から相続した家だから何となく手放せない。そういう理由だけで5年、10年と持ち続けるのであれば、一度立ち止まって考えてみてもいいと思います。

手放せない気持ちは、責められることではありません。ただ、金額を知らないまま時間が過ぎていくのは、少しもったいないと思います。

10年後の建物が、今より良い状態になっていることはありません。使わずに置いている間にも建物は年を取ります。傷みが進んでからでは、売ることも貸すことも難しくなることがあります。

ここで、私は空き家はすぐ売った方がいいと言いたいわけではありません。残すという選択肢もあります。貸すという方法もあります。将来自分たちで使うのであれば、きちんと管理しながら持っておけばいいと思います。

ただ、何となく持ち続けるのと、年間これだけ費用がかかる、それでも残しておこうと分かったうえで持ち続けるのとでは違います。

計算してみて、その金額を見ても残しておきたいのであれば、それも一つの判断です。反対に、誰も使う予定がない家にこれだけ払っていたのか、と気付けば、貸せないか、売れないか、別の使い方ができないかを考えるきっかけになります。

空き家のことを考えると、どうしても、今いくらで売れるのか、という話になりがちです。

でも、その前に確認してほしい数字があります。この家を持ち続けるために、毎年いくら払っているのか、です。

固定資産税。保険。草刈り。庭木の剪定。光熱費。交通費。管理を頼んでいるなら管理費。そして、これまでにかかった修繕費。一度、全部書き出してみてください。

売るか。貸すか。残すか。その判断をする前に、まず持ち続ける費用を知る。分かったうえで残すのなら、それでいいと思います。

私の事務所は大阪の寝屋川市にあります。ご相談の中には、遠方にある空き家についてのお話もあります。

空き家をどうするか迷っているのであれば、まず今年1年間で、その家にいくら使っているのかを書き出してみるところから始めてはいかがでしょうか。

計算してみて、思っていたより大きな金額になっていたら、そのときに次を考えれば間に合います。売るのか、貸すのか、それでも残すのか。その家がどのくらいの値段になりそうなのか、貸せる家なのかも含めて、一緒に整理します。まだ何も決めていない段階でも大丈夫です。

※この記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。記事に出てくる金額はあくまで一例です。税額や費用の目安、制度の詳細や個別の取り扱いについては、自治体の担当窓口や専門家にご確認ください。

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賃貸中の実家を相続。賃貸借契約書が見つからないときに探すもの

相続の手続きが進んで、親が残した書類を一つずつ確認していく。引き出しや戸棚を開けて、封筒の中身を見ていく。それでも、賃貸借契約書だけが出てきません。

その家には以前から借主さんが住んでいます。家賃も毎月きちんと入っている。それなのに、どんな条件で貸していたのかを示す書類が見つからない。

「家賃がいくらなのかは、通帳を見れば分かる。でも、それ以外の契約内容が分からない」

こうなると、不安になると思います。慌てなくて大丈夫です。

まず、契約書が手元に見つからないからといって、すぐに賃貸借契約がないということにはなりません。実際に借主さんが住んでいて家賃を支払っているのであれば、契約書が見つからないというだけで、賃貸借そのものがなかったとは言えません。

問題は、

「どんな条件で貸していたのか」

が分からないことです。

家賃はいくらなのか。共益費や駐車場代はあるのか。敷金や保証金を預かっていたのか。それとも礼金だけだったのか。退去するときに敷引きの取り決めがあるのか。修繕について何か特約を決めていたのか。

家賃が毎月振り込まれているからといって、こうした契約内容まで分かるわけではありません。

もし借主さんから、「入居するときに、こういう約束をしました」と言われても、こちらに契約書がなければ、すぐには確認できません。

親と借主さんの間では分かっていたことでも、相続した自分には分からない。ここが、賃貸中の不動産を相続したときに困るところです。

そこで、まず残っている資料を探します。親が使っていた通帳を見れば、毎月いくら振り込まれているのか、振込名義は誰なのかが分かることがあります。不動産会社や管理会社を通して契約していたのであれば、契約書の控えが残っている可能性もあります。

家賃保証会社を利用していれば、その資料が残っていることもあります。過去の更新書類、家賃変更の通知、借主さんとの手紙やメールなどから、契約内容が分かることもあります。

それでも契約書が見つからなければ、借主さんが持っている可能性があります。貸主側の契約書が見つからなくても、借主さんの手元には契約時に渡された契約書が残っていることがあります。

その場合は、「相続で所有者が変わり、契約内容を確認したいので、お手元の契約書を見せていただけませんか」とお願いして、写しを取らせてもらう方法もあります。

契約書が見つからないと、「それなら、新しく契約書を作ればいいのでは」と思うかもしれません。

でも、ここは急がない方がいいところです。

以前の契約条件が分からないまま新しい契約書を作ってしまうと、これまでの内容と違うものになってしまう可能性があります。借主さんから、「以前はそんな条件ではありませんでした」と言われることも考えられます。

親と借主さんの間では分かっていた約束を、相続した側が知らないだけかもしれません。だから、まずはこれまでの契約内容をできるだけたどることから始めます。

相続した不動産が空き家であれば、売る、貸す、残すというところから考えることができます。でも、すでに人に貸している不動産を相続した場合は少し違います。

相続した時点ですでに借主さんが住んでいて、賃貸借が続いています。

親が元気なうちは、「家賃も入っているし、特に問題はない」と思っていたかもしれません。ところが、相続して自分が管理する立場になった途端、今まで親がしていたことを自分が引き継がなければならなくなります。

寝屋川市や枚方市でも、賃貸中の家を相続されて、契約の中身が分からないというご相談をいただくことがあります。

契約書が見つからないと、最初は、

「何も分からない」

と感じるかもしれません。

でも、通帳を見る。不動産会社や管理会社に確認する。保証会社の資料を探す。過去の手紙やメールを見る。必要であれば、借主さんに契約書の写しがないか確認する。一つずつ確認していけば、分かることは出てきます。

大切なのは、分からないまま新しい条件を決めてしまわないことです。

親から引き継ぐのは、不動産だけではありません。借主さんとの間で決めていた約束も一緒に引き継ぎます。その約束が分からないのであれば、まずそこを整理するところから始めればいいと思います。

名義の手続きと、契約の中身を確かめる作業。相続した直後は、この二つが同じ時期にやってきます。どちらも一度に片付けようとすると負担が大きいので、分かるところから順に手をつけていけば十分だと思います。

手元の資料を見ても契約内容がはっきりしないときは、何から確認すればいいかを一緒に整理することもできます。まだ何も決めていない段階でも構いません。

※この記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の取り扱いについては、司法書士などの専門家にご確認ください。

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空き家の見回りで確認する場所。写真で前回と比べる

車を停めて、久しぶりに実家の鍵を開ける。郵便受けにたまったチラシを抜き取り、玄関と窓を開けて空気を入れ替える。部屋を一通り歩いて、庭の草の伸び具合も見ておく。

「特に変わったところはなさそうだ」

そう思って戸締まりをして帰る。空き家を持っておられる方から、こういうお話をよく伺います。ただ、帰り道になって、少し気になることがあるそうです。

そもそも、何を見れば「変わったところはない」と言えるのでしょうか。

正直に言うと、私も気が進まないことがあります。玄関を開けた瞬間、かび臭いにおいと埃っぽさが一度に出てきます。仕事で来ているのに、中へ入るのを少しためらう。そういうときもあります。

家の中は薄暗いので、スマートフォンのライトをつけて進みます。すると、途中でクモの糸が顔や腕に触れる。アッと声が出ます。

何度行っても、気持ちのいいものではありません。だから、足が遠のく気持ちは分かります。責められることでは、ありません。

それでも、行かなければ分からないことがあります。

中へ入ったら、見る場所はだいたい決まっています。屋根、外壁、基礎、床、天井、水まわり、窓やドア。そこを順に見ながら、気になるところがないか確認していきます。

ただ、これをそのままお願いするわけにはいきません。「建物が傾いていないか見てください」「屋根の状態を確認してください」と言われても、困ると思います。屋根を見るために脚立へ上がったり、屋根の上へ登ったりするのは危険です。傾きについても、普通に歩いただけで何ミリ傾いているのか分かる人は少ないと思います。

そこまで自分で調べる必要はありません。

空き家を見に行ったときに確認していただきたいのは、

「前に来たときと何か違わないか」

です。

例えば、家へ入る前に建物の周りを一周してみます。屋根そのものを詳しく見る必要はありません。地面に瓦や屋根材のようなものが落ちていないか。雨どいが外れていないか。外壁の一部が剥がれ落ちていないか。窓ガラスが割れていないか。

それなら、地面からでも確認できます。

傷んだ屋根を放っておくと、隣の家にまで被害が及ぶことがあります。実際にあった話は、こちらに書いています。
「台風で隣の空き家から雨漏り。持ち主に連絡が取れないと、どうなるのか」

庭も見ます。木の枝が隣の家まで伸びていないか。道路にはみ出していないか。草や落ち葉が排水口をふさいでいないか。ハチの巣のようなものができていないか。

ここでも、「この木は危険な状態なのか」まで判断する必要はありません。

「前回来たときより、ずいぶん大きくなったな」

それに気付くだけでも違います。

そして玄関を開けたら、見た目だけではなく、においも確認してみてください。以前よりカビ臭くなっていないか。下水のような臭いがしないか。動物が入り込んだような臭いがしないか。

先ほど書いたとおり、私も玄関を開けた瞬間には身構えます。ただ、あのにおいは合図でもあります。家に入った瞬間に感じる違和感は、意外と分かりやすいものです。

家の中へ入ったら、天井を見上げてみます。茶色や黄色っぽいシミができていないか。以前からあったシミなら、広がっていないか。天井材が膨らんだり、垂れ下がったりしていないか。

ここでも、

「これは雨漏りだ」

と自分で判断する必要はありません。

「こんなシミ、前にあったかな?」

それで十分です。

床も同じです。傾きを測る機械を持って行く必要はありません。普通に歩いてみる。以前は何ともなかった場所がフワフワする。踏むと少し沈む。床板がめくれている。今まで聞かなかったような音がする。そんなところがあれば、覚えておきます。

窓やドアも、実際に動かしてみれば分かることがあります。前は普通に開いていた窓が、開きにくくなっている。引き戸が途中で引っ掛かる。玄関ドアが以前より閉まりにくい。

それだけで建物に問題があるとは限りません。だから、自分で原因を決めつける必要もありません。

水回りも、難しく考えなくていいと思います。キッチンや洗面台の下を開けて、濡れた跡がないかを見る。トイレの床を見る。配管の周りに新しいシミがないかを見る。水道を止めている家なら、無理に水を出す必要もありません。

そして、空き家を見に行くときに使っていただきたいものがあります。特別な機械ではありません。

スマートフォンです。

家の正面。裏側。左右の外壁。庭。各部屋。天井。水回り。毎回、できるだけ同じ場所から写真を撮っておきます。問題がある場所だけを撮るのではありません。何も問題がない場所も撮っておく。

これが大切です。

半年後に同じ家へ行って、「この天井のシミ、前からあったかな?」と思ったとき、前回の写真を見ることができます。「前回も同じだった」「いや、今回は少し広がっている」。これなら建物の専門家でなくても比較できます。

例えば、今回何も記録せずに帰ったとします。半年後、天井にシミを見つけた。でも、前からあったのか分からない。外壁にひび割れを見つけても、以前からあったのか、最近できたのか分からない。

結局、「たぶん前からあったと思う」で終わってしまうかもしれません。

一方で、毎回同じ場所を見て、写真を残していれば変化を比べることができます。異変に早く気付けば、その時点で専門家に見てもらうこともできます。

同じ空き家を見に行くのでも、ただ家の中を一周して帰るのと、見る場所を決めて前回と比較するのとでは違います。

空き家の確認で必要なのは、建物を診断する力ではないと思います。

変化に気付くことです。

何も決めずに家の中を一周するのではなく、家の外を一周する。玄関を開けたら、においを確認する。天井を見る。床を歩く。窓やドアを動かす。水回りを見る。最後に写真を撮る。

これだけでも、見る場所が決まります。

国土交通省にも空き家の管理についての資料があります。ただ、その中には、ご自分で確認するには判断が難しい項目もあります。

大事なのは、無理をしないことです。屋根には上らない。脚立で高いところを見ない。専門的な機材も要りません。専門家でなければ分からないことを、その場で自分で判断しようとしない。見えるところを見て、気になったら写真を撮る。それで十分です。

そこで、空き家へ行ったときにご自分で確認できる項目だけをまとめたチェックシートを作りました。印刷して、そのまま持って行けます。

外壁、雨どい、窓、玄関のにおい、天井、床、建具、水まわり。順番に見ていける形にしてあります。項目の横には、写真の番号を書く欄も付けました。あとで写真を見返したときに、どの場所を撮ったものか分かります。

最後の1枚は、費用の欄です。固定資産税、保険、草刈り、光熱費、交通費、修理代。1年間でいくら使っているのかを書き出す表になっています。そのうえで、5年、10年と持ち続けた場合の金額も出せます。

空き家の管理・費用チェックシート(PDF)

建物の状態と、かかっている費用。この二つが分かると、これからどうするかを考えやすくなります。

何かを見つけたからといって、すぐに大きな修理が必要ということでもありません。分からなければ、その写真を専門家に見てもらえばいい。何もなければ、また次に行ったときに同じところを確認すればいい。

空き家へ行く目的を、「とりあえず様子を見に行く」から「前回から変わったところがないか確認する」に少し変えてみる。それだけでも、空き家の見方は変わると思います。

寝屋川市や枚方市でも、空き家の様子を見に行っておられる方からご相談をいただくことがあります。遠くに住んでいて、年に数回しか行けないという方もおられます。

撮った写真を見ても判断がつかないとき。あるいは、この家をこれからどうするか決めきれないとき。その写真を見せていただければ、状況を一緒に整理することもできます。まだ決めていない段階でも大丈夫です。

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使っていない実家や田畑を子どもに残す前に考えたいこと

毎年届く固定資産税の納税通知書。その中に、もう何年も使っていない家や田畑の分が入っている。そんな状態のまま、何年も過ぎているという方もいます。

子どものころに両親と暮らした家。近くには田んぼや畑があり、昔は親が手入れをしていました。でも今は、誰も住んでいません。田んぼも畑も使っていません。

相続して自分の名義にはなったものの、今の暮らしはその土地から離れている。仕事もあり、家庭もある。頻繁に帰って草刈りをしたり、家の中を確認したりするのは簡単ではありません。

それでも、先祖代々の土地だから手放しにくい。

自分の代で売っていいのだろうか。子どもに残しておいた方がいいのではないか。そんなことを考えて、そのまま時間が過ぎていきます。

固定資産税は毎年払う。草は伸びる。木も大きくなる。家も少しずつ傷んでいく。台風が来れば屋根が気になり、近所から連絡があれば何かあったのかと心配になります。

使っていないのに、気持ちのどこかではずっと気になっている。

一方で、自分が元気なうちに整理できれば、この状態は変わります。

売れるのか。貸せるのか。近所の方が使ってくれるのか。田んぼや畑なら、誰か耕してくれる人はいないのか。まず調べるだけでも、次に何をすればいいのかが見えてきます。

子どもに資産を残すことは、よいことだと思います。ただ、残すものが本当に資産なのかは、一度考えた方がいいと思っています。

誰も住まない家。誰も使わない土地。遠く離れていて、管理するだけで時間とお金がかかる不動産。

それを子どもが相続したとき、この家をどうしたらいいのか、この土地は売れるのか、草刈りは誰がするのか、固定資産税だけを払い続けるのか、と考えることになります。今、自分が考えていることを、そのまま子どもが考えることになるかもしれません。

資産を残したつもりでも、実際には判断しなければならない不動産を残してしまうことがあります。

以前、山の中にある別荘用地を見に行ったことがあります。

一時期、別荘地として販売され、多くの方が土地を購入した場所です。現地へ向かう道路は荒れ、周りにはほとんど建物がありません。木が生い茂り、土地がどこからどこまでなのか分かりにくくなっているところもありました。

購入した当時は、いつか別荘を建てよう、土地だから持っていてもいいだろう、と考えたのかもしれません。しかし、結局建物は建てなかった。そのまま何十年も経ち、今では使う予定もない。

購入したときの金額と比べれば、売却価格はかなり安くなるかもしれません。そうなると、そんな値段なら売らない、という気持ちになります。その気持ちは自然なものだと思います。

でも、ここで考えたいことがあります。

安くても買ってくれる人がいる今と、何年か後に買ってくれる人がいなくなるのとでは、状況が違います。

周りの土地も同じように相続され、所有者が次々と売りに出せば、売りたい土地が増えていきます。一方で、その地域の土地を欲しい人が増えるとは限りません。そうなると、今より売りにくくなることもあります。

いくらで売れるのかだけではなく、これから誰が使うのかを考えることも大切です。自分が使うのか。子どもが使うのか。貸せるのか。近所の方が使うのか。

どうしても引き取り手が見つからない土地については、相続土地国庫帰属制度というものもあります。相続や遺贈で取得した土地を、国に引き取ってもらう制度です。2023年4月から始まりました。

ただ、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。建物が建っている土地は対象外です。抵当権などが付いている土地、境界がはっきりしない土地も申請できません。相続や遺贈で取得した土地に限られるので、自分で買った土地や生前に贈与を受けた土地は使えません。

費用もかかります。申請のときの審査手数料に加えて、引き取ってもらえることになった場合には負担金を納めます。負担金は、国が10年分の管理費用として算定するもので、土地の種類や場所によって金額が変わります。

つまり、いらないから国に渡す、という簡単な話ではありません。それでも、選択肢の一つとして知っておく価値はあると思います。使えるかどうかは条件次第ですので、詳しいことは土地のある場所を管轄する法務局へご相談ください。

誰も使う予定がないのであれば、なぜ持ち続けるのか。そこを一度考えてみてもいいと思います。

先祖代々の土地だから。親から相続した家だから。簡単に手放せない気持ちはあると思います。責められることでは、ありません。

でも、土地をずっと所有し続けることだけが、受け継いだものを大切にする方法ではありません。

自分の代で整理し、子どもには管理の負担を残さない。それも一つの引き継ぎ方です。

実家へ帰るたびに、また草が伸びているな、そろそろ何とかしないとな、と思っているのであれば、その「いつか」を子どもの代まで先送りしないという考え方もあります。

売るかどうかを、すぐに決める必要はありません。まずは今、その不動産がどんな状態なのか。売れるのか。貸せるのか。使ってくれる人がいるのか。そこを確認するだけでも構いません。

まだ売るとも残すとも決めていない段階で、かまいません。書類がそろっていなくても、場所が遠くても、お話をうかがうことはできます。今どうなっているのかを一緒に整理して、そのうえで考えていただければと思います。

一人で考えていると、同じところを何年も行き来してしまうことがあります。一度どなたかに話してみると、次に何をすればいいのかが見えてくることもあります。

※この記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の取り扱いについては、土地のある場所を管轄する法務局などの窓口にご確認ください。

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