空き家の見回りで確認する場所。写真で前回と比べる

    車を停めて、久しぶりに実家の鍵を開ける。郵便受けにたまったチラシを抜き取り、玄関と窓を開けて空気を入れ替える。部屋を一通り歩いて、庭の草の伸び具合も見ておく。

    「特に変わったところはなさそうだ」

    そう思って戸締まりをして帰る。空き家を持っておられる方から、こういうお話をよく伺います。ただ、帰り道になって、少し気になることがあるそうです。

    そもそも、何を見れば「変わったところはない」と言えるのでしょうか。

    正直に言うと、私も気が進まないことがあります。玄関を開けた瞬間、かび臭いにおいと埃っぽさが一度に出てきます。仕事で来ているのに、中へ入るのを少しためらう。そういうときもあります。

    家の中は薄暗いので、スマートフォンのライトをつけて進みます。すると、途中でクモの糸が顔や腕に触れる。アッと声が出ます。

    何度行っても、気持ちのいいものではありません。だから、足が遠のく気持ちは分かります。責められることでは、ありません。

    それでも、行かなければ分からないことがあります。

    中へ入ったら、見る場所はだいたい決まっています。屋根、外壁、基礎、床、天井、水まわり、窓やドア。そこを順に見ながら、気になるところがないか確認していきます。

    ただ、これをそのままお願いするわけにはいきません。「建物が傾いていないか見てください」「屋根の状態を確認してください」と言われても、困ると思います。屋根を見るために脚立へ上がったり、屋根の上へ登ったりするのは危険です。傾きについても、普通に歩いただけで何ミリ傾いているのか分かる人は少ないと思います。

    そこまで自分で調べる必要はありません。

    空き家を見に行ったときに確認していただきたいのは、

    「前に来たときと何か違わないか」

    です。

    例えば、家へ入る前に建物の周りを一周してみます。屋根そのものを詳しく見る必要はありません。地面に瓦や屋根材のようなものが落ちていないか。雨どいが外れていないか。外壁の一部が剥がれ落ちていないか。窓ガラスが割れていないか。

    それなら、地面からでも確認できます。

    庭も見ます。木の枝が隣の家まで伸びていないか。道路にはみ出していないか。草や落ち葉が排水口をふさいでいないか。ハチの巣のようなものができていないか。

    ここでも、「この木は危険な状態なのか」まで判断する必要はありません。

    「前回来たときより、ずいぶん大きくなったな」

    それに気付くだけでも違います。

    そして玄関を開けたら、見た目だけではなく、においも確認してみてください。以前よりカビ臭くなっていないか。下水のような臭いがしないか。動物が入り込んだような臭いがしないか。

    先ほど書いたとおり、私も玄関を開けた瞬間には身構えます。ただ、あのにおいは合図でもあります。家に入った瞬間に感じる違和感は、意外と分かりやすいものです。

    家の中へ入ったら、天井を見上げてみます。茶色や黄色っぽいシミができていないか。以前からあったシミなら、広がっていないか。天井材が膨らんだり、垂れ下がったりしていないか。

    ここでも、

    「これは雨漏りだ」

    と自分で判断する必要はありません。

    「こんなシミ、前にあったかな?」

    それで十分です。

    床も同じです。傾きを測る機械を持って行く必要はありません。普通に歩いてみる。以前は何ともなかった場所がフワフワする。踏むと少し沈む。床板がめくれている。今まで聞かなかったような音がする。そんなところがあれば、覚えておきます。

    窓やドアも、実際に動かしてみれば分かることがあります。前は普通に開いていた窓が、開きにくくなっている。引き戸が途中で引っ掛かる。玄関ドアが以前より閉まりにくい。

    それだけで建物に問題があるとは限りません。だから、自分で原因を決めつける必要もありません。

    水回りも、難しく考えなくていいと思います。キッチンや洗面台の下を開けて、濡れた跡がないかを見る。トイレの床を見る。配管の周りに新しいシミがないかを見る。水道を止めている家なら、無理に水を出す必要もありません。

    そして、空き家を見に行くときに使っていただきたいものがあります。特別な機械ではありません。

    スマートフォンです。

    家の正面。裏側。左右の外壁。庭。各部屋。天井。水回り。毎回、できるだけ同じ場所から写真を撮っておきます。問題がある場所だけを撮るのではありません。何も問題がない場所も撮っておく。

    これが大切です。

    半年後に同じ家へ行って、「この天井のシミ、前からあったかな?」と思ったとき、前回の写真を見ることができます。「前回も同じだった」「いや、今回は少し広がっている」。これなら建物の専門家でなくても比較できます。

    例えば、今回何も記録せずに帰ったとします。半年後、天井にシミを見つけた。でも、前からあったのか分からない。外壁にひび割れを見つけても、以前からあったのか、最近できたのか分からない。

    結局、「たぶん前からあったと思う」で終わってしまうかもしれません。

    一方で、毎回同じ場所を見て、写真を残していれば変化を比べることができます。異変に早く気付けば、その時点で専門家に見てもらうこともできます。

    同じ空き家を見に行くのでも、ただ家の中を一周して帰るのと、見る場所を決めて前回と比較するのとでは違います。

    空き家の確認で必要なのは、建物を診断する力ではないと思います。

    変化に気付くことです。

    何も決めずに家の中を一周するのではなく、家の外を一周する。玄関を開けたら、においを確認する。天井を見る。床を歩く。窓やドアを動かす。水回りを見る。最後に写真を撮る。

    これだけでも、見る場所が決まります。

    国土交通省にも空き家の管理についての資料があります。ただ、その中には、ご自分で確認するには判断が難しい項目もあります。

    大事なのは、無理をしないことです。屋根には上らない。脚立で高いところを見ない。専門的な機材も要りません。専門家でなければ分からないことを、その場で自分で判断しようとしない。見えるところを見て、気になったら写真を撮る。それで十分です。

    そこで、空き家へ行ったときにご自分で確認できる項目だけをまとめたチェックシートを作りました。印刷して、そのまま持って行けます。

    外壁、雨どい、窓、玄関のにおい、天井、床、建具、水まわり。順番に見ていける形にしてあります。項目の横には、写真の番号を書く欄も付けました。あとで写真を見返したときに、どの場所を撮ったものか分かります。

    最後の1枚は、費用の欄です。固定資産税、保険、草刈り、光熱費、交通費、修理代。1年間でいくら使っているのかを書き出す表になっています。そのうえで、5年、10年と持ち続けた場合の金額も出せます。

    空き家の管理・費用チェックシート(PDF)

    建物の状態と、かかっている費用。この二つが分かると、これからどうするかを考えやすくなります。

    何かを見つけたからといって、すぐに大きな修理が必要ということでもありません。分からなければ、その写真を専門家に見てもらえばいい。何もなければ、また次に行ったときに同じところを確認すればいい。

    空き家へ行く目的を、「とりあえず様子を見に行く」から「前回から変わったところがないか確認する」に少し変えてみる。それだけでも、空き家の見方は変わると思います。

    寝屋川市や枚方市でも、空き家の様子を見に行っておられる方からご相談をいただくことがあります。遠くに住んでいて、年に数回しか行けないという方もおられます。

    撮った写真を見ても判断がつかないとき。あるいは、この家をこれからどうするか決めきれないとき。その写真を見せていただければ、状況を一緒に整理することもできます。まだ決めていない段階でも大丈夫です。

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