台風で隣の空き家から雨漏り。持ち主に連絡が取れないと、どうなるのか

    台風が過ぎた翌朝、隣の家の方から電話が入ることがあります。天井にしみが広がってきた、お隣の屋根から水が回っているようだ、と。ところが、その家には誰も住んでいません。

    台風で屋根が傷んだとき、困るのは、その家の持ち主だけではないのです。

    以前、こんなことがありました。

    テラスハウスの屋根が台風で傷み、そこから雨が入って、隣の住戸で雨漏りが起きました。壁を水が伝ってくる。天井にはしみが広がる。放っておけば、被害は大きくなっていきます。

    早く直したい。

    ところが、傷んでいる側の家は空き家でした。そして、その家の持ち主と連絡が取れません。

    登記簿を確認しました。登記簿を見れば、登記上の所有者と住所は確認できます。でも、その家は相続登記がされておらず、亡くなった前の所有者の名義がそのまま残っていました。

    そこからが大変でした。

    登記されている住所へ手紙を出す。でも戻ってくる。役所の固定資産税の窓口にも行きました。税金を納めている人は分かっているはずです。でも、個人情報ですから教えてもらうことはできません。

    空き家の玄関にもメモを挟みました。でも、その家へ誰かがいつ来るのか分かりません。半年後かもしれないし、もう誰も来ないかもしれない。その間にも、隣では雨漏りが続いています。

    ここが困るところです。こちらは修理したい。でも、勝手に他人の家の屋根を触るわけにはいきません。

    そこで役所へお願いしました。

    「所有者を教えてほしいとは言いません。ただ、隣で雨漏りが起きています。こちらで修理をしたいので、一度連絡がほしいと伝えてもらえませんか」

    手紙も預けました。一度行けば終わる話ではありませんでした。何度か足を運びました。

    こちらが伝えたかったのは、難しいことではありません。修理費はこちらで負担する。ただ、人の家なので勝手には触らない。承諾だけほしい。会う場所は役所でもいい。こちらから出向いてもいい。できるだけ、相手が動きやすい方法を考えました。

    そして、ようやく所有者と連絡がつきました。

    このときに思ったことがあります。

    連絡がつかない人が、こちらを無視しているとは限らない。

    そもそも、連絡が届いていないことがあります。親から家を相続したけれど、登記名義は親のまま。本人も引っ越しているのに、登記簿の住所は昔のまま。空き家には誰も行かない。こうなると、外から連絡を取ろうとしても、入口がほとんどありません。

    普段は、それでも困らないかもしれません。誰も住んでいない。近所からも何も言われない。固定資産税だけ払って、そのまま置いている。

    でも、台風が来たら状況は一気に変わります。屋根が飛ぶ。外壁が壊れる。雨が入る。庭木や物が隣へ倒れる。そして、隣の家に被害が出ます。

    そのとき、「持ち主と連絡が取れません」では、隣の方は待ってくれません。雨漏りは、連絡がつくまで止まってくれないからです。

    何も起きなければ、登記名義が昔のままでも、住所が古いままでも、日常生活では困りません。でも、何か起きた瞬間に、「連絡が取れる空き家」と「連絡が取れない空き家」の差が出ます。私は、ここが大きいと思っています。

    相続した家を、すぐに売る必要はありません。貸さなくてもいい。しばらく空き家のまま残すという選択もあります。

    ただ、何かあったときに、自分のところへ連絡が届く状態にはしておいた方がいいと思います。

    名義が亡くなった方のままなら、相続登記をしておく。自分が引っ越して登記簿の住所が古いままなら、住所変更も確認しておく。

    相続登記はすでに義務化されています。2024年4月1日より前の相続で、まだ相続登記をしていない場合も対象になり、原則として2027年3月31日までが一つの期限になっています。

    住所や氏名の変更登記も、2026年4月1日から義務になりました。変更があった日から2年以内に申請することとされています。こちらも、施行日より前の引っ越しで登記が古いままの場合が対象になり、2028年3月31日までの猶予が設けられています。

    難しい話をしたいわけではありません。

    登記簿を見た人が、今の持ち主へたどり着けるようにしておく。それが大切です。

    もう一つ、この時期だからこそ確認しておきたいのが火災保険です。

    親が住んでいたときに加入した火災保険を、そのままにしている方もいると思います。でも、親が亡くなって所有者が変わった。誰も住まなくなった。家の使われ方が変わった。

    そういうときは、一度保険証券を出して、代理店や保険会社へ、「今は空き家になっています。この契約のままでいいですか」と確認しておいた方がいいと思います。

    火災保険は、建物の所有者や使われ方が変わったときに、契約内容の変更手続きが必要になることがあります。伝えていないと、いざというときに困ることもあります。これも、台風が来てから証券を探すより、何も起きていないときに確認しておく方が楽です。

    台風の前に、遠く離れた実家の屋根へ上がって確認することはできません。毎月、草刈りに行くことも難しい。

    でも、相続登記を確認する。住所を確認する。火災保険を確認する。これは、遠くに住んでいてもできます。

    何もしなくても、何年も何も起きないかもしれません。それなら、それでいいのです。

    でも、もし台風の翌日に、「あなたの空き家から、隣の家に雨漏りしています」という連絡が来たら。すぐ話ができる状態なのか。それとも、誰もあなたへ連絡できない状態なのか。同じ空き家でも、ここには大きな違いがあります。

    空き家で困るのは、古くなることだけではありません。

    何か起きたときに、誰も動けなくなることがあります。

    寝屋川市や枚方市でも、隣の空き家のことでご相談をいただくことがあります。持ち主の方に悪気があったわけではなく、連絡の入口がなかっただけ、ということが少なくありません。

    売るか、残すか、貸すか。そこまで今の段階で決めなくてもかまいません。まずは、何かあったときに連絡が届き、自分が動ける状態にしておく。それだけでも、ずいぶん違います。

    登記のことは後回しになりがちです。責められることでは、ありません。台風の多い時期に一度、実家や空き家の登記と火災保険を思い出していただければと思います。

    今の名義がどうなっているのか分からない、という段階でも大丈夫です。どこから確認すればいいのか、順番も含めて一緒に整理できます。

    ※この記事は2026年8月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の取り扱いについては、法務局・司法書士にご確認ください。

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