気に入った中古住宅を見つけて、内見をお願いした。ところが、何日たっても日程が決まらない。
返ってくるのは、いつも似たような言葉です。
「商談中です」「担当者が不在です」「売主様の都合で、今は内覧できません」
もちろん、本当に商談中であったり、売主様のご都合で紹介できなかったりすることはあります。ただ、何度問い合わせても話が進まない。別の日を尋ねても、はっきりした返事がない。そのようなときは、売主様の知らないところで、他社からの紹介を止めている可能性もあります。
これが、いわゆる「囲い込み」です。
不動産会社が売主様から売却の依頼を受け、自社で買主も見つけると、売主様と買主様の両方から仲介手数料を受け取ることができます。これを「両手仲介」といいます。一方、売主側と買主側を別々の不動産会社が担当する場合は、それぞれが自分のお客様から仲介手数料を受け取ります。これを「片手仲介」といいます。
両手仲介そのものが禁止されているわけではありません。自社で買主を見つけ、売主様と買主様の双方が納得して取引をするのであれば、問題はありません。
問題になるのは、両手仲介にするために、他社が連れてきた購入希望者を理由なく断ることです。
他社から内覧の問い合わせが入っているのに、「すでに商談中です」「申込みが入っています」などと事実と異なる説明をして、自社のお客様にだけ物件を紹介する。その結果、売主様は購入の可能性がある人を逃してしまいます。
売主様は、広く買主を探してもらっているつもりです。しかし実際には、依頼した不動産会社の中だけで買主探しが行われている。
これが、囲い込みの問題です。
レインズには以前から、売主様が自分の物件の取引状況を確認できるステータス管理機能がありました。レインズとは、不動産会社同士が売却物件の情報を共有するためのシステムです。
専属専任媒介契約では、媒介契約を結んだ日の翌日から休業日を除いて5日以内、専任媒介契約では7日以内に、物件情報をレインズへ登録しなければなりません。2025年1月からは、レインズに登録する取引状況も宅地建物取引業法上の登録事項として位置づけられました。
専属専任媒介契約または専任媒介契約で登録した物件について、申込みの受付状況などが事実と異なる場合は、指示処分の対象になります。
つまり、「本当は購入申込みが入っていないのに、申込みが入っている状態にする」「売主様が紹介停止を求めていないのに、売主都合で紹介停止中と登録する」といったことが、以前よりも明確に問題として扱われるようになりました。
制度としては、囲い込みを防ぐ方向へ進んでいます。
ただ、制度ができただけで、囲い込みがなくなるわけではありません。
国土交通省が行ったアンケートでは、約7割の事業者が、売主様にステータス管理機能の説明をしていないという結果が出ています。また、専任媒介契約や専属専任媒介契約を結んだ物件について、登録期限を超えてからレインズへ登録していた例や、媒介契約の年月日を誤って入力していた例も確認されています。
売主様がこの仕組みを知らなければ、自分の物件がどのように登録されているのか確認できません。不動産会社から登録証明書を受け取っていても、それを保管するだけで終わっている方も多いと思います。
これは、売主様の側に落ち度があるという話ではありません。説明がなければ、確認できるものだと気づきようがないからです。
制度があっても、使い方が売主様へ伝わっていなければ、確認のしようがありません。
媒介契約を結び、不動産会社が物件をレインズへ登録すると、売主様には登録証明書が交付されます。その証明書に記載されたURL、ID、パスワードなどを使って売主専用画面へ入ると、自分の物件がどのような状態で登録されているのかを確認できます。
表示される取引状況は、「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3つです。
売却を依頼したあと、内覧の報告がほとんどない。問い合わせも入らない。不動産会社からは「反響がありません」と言われている。
そのようなときは、まずレインズの登録内容を確認してみてもよいと思います。
覚えのない時期に「書面による購入申込みあり」になっていたり、依頼していないのに「売主都合で一時紹介停止中」になっていたりすれば、理由を確認する必要があります。
ただし、レインズのステータスを確認すれば、すべての囲い込みを見つけられるわけではありません。
ステータスが「公開中」になっていても、他社からの内覧依頼に対して、「担当者が戻ったら連絡します」「売主様に確認します」と言いながら返事を遅らせることはできます。
問い合わせがあったことを、売主様へ報告しないことも考えられます。表面上は公開中でも、実際には他社が紹介しにくい状態になっている可能性は残ります。
だからこそ、売主様はステータスを見るだけではなく、販売活動の内容も確認した方がよいと思います。
どの不動産会社から問い合わせがあったのか。何件の内覧があったのか。内覧を断ったことはあるのか。断ったのであれば、その理由は何だったのか。
専任媒介契約や専属専任媒介契約では、不動産会社から定期的な業務報告があります。「反響はありませんでした」という一言だけではなく、どのような販売活動を行い、どのような問い合わせがあったのかを確認することが大切です。
囲い込みの話をすると、両手仲介そのものが悪いように受け取られることがあります。私は、そうではないと思っています。
自社で購入希望者を見つけ、その方が物件を気に入り、売主様も条件に納得して契約する。それであれば、何も問題はありません。
問題なのは、自社で両手仲介にするために、売主様の売却機会を狭めることです。
売主様から売却を任された不動産会社が優先すべきなのは、自社の仲介手数料ではありません。売主様にとって、よりよい条件で、できるだけ早く、安全に売却することです。
他社が買主を見つけてきたのであれば、その方にもきちんと物件を紹介する。条件が合えば、契約に向けて進める。
本来は、それが普通の仕事だと思います。
媒介契約を結んだら、レインズの登録証明書を受け取ってください。受け取ったあとは、書類を保管するだけではなく、売主専用画面へ入り、登録内容を一度確認してみてください。
その後も、売却活動中に何度かステータスを確認します。そして、不動産会社から受ける業務報告と照らし合わせます。
購入申込みが入っている表示なのに、その報告を受けていない。売主都合で紹介停止中になっているのに、自分は止めていない。
そのような違いがあれば、依頼した不動産会社へ確認します。
質問をすることは、不動産会社を疑うことではありません。自分の物件が、どのように販売されているのかを確認するだけです。
当社では、レインズへ登録した内容を売主様にも確認していただきながら、売却を進めています。ステータス管理の仕組みについても、媒介契約時に説明しています。寝屋川市や枚方市で売却のご相談をいただくときも、まずこの話からお伝えすることが多いです。
囲い込みに対する規制は始まりました。ただ、制度ができただけで、すべてが見えるようになったわけではありません。
売主様自身が登録内容を確認し、不動産会社からの報告と照らし合わせる。その仕組みを知っておくことが、自分の物件の売却機会を守る一つの方法だと思います。
今すでに売却を依頼している方も、これから依頼を考えている方も、まだ何も決めていない段階で構いません。
登録証明書の見方が分からない。今の販売状況が正しいのか判断できない。そういったことでも、お気軽にご相談ください。
※この記事は2026年8月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の取り扱いについては、専門家にご確認ください。
