不動産会社の仕事とは。仲介手数料に含まれていること

    不動産屋さんは、結局のところ物件を紹介してくれるところですよね。そう言われたことがあります。

    外から見れば、そう見えるのだろうと思います。物件を紹介する。家を売る。契約書を作る。住宅ローンの手続きを手伝う。並べてみると、それで説明がついてしまいそうです。

    ただ、この仕事を長く続けていると、それだけではないと思うようになります。物件を紹介するだけなら、ポータルサイトがあります。価格を調べるだけなら、インターネットでもある程度は分かります。契約書も、ひな型はあります。住宅ローンも、ネットから申し込めます。

    では、不動産会社は何のためにあるのか。一度、整理してみたいと思います。

    売主から売却の依頼を受ける。物件を掲載する。問い合わせが入る。案内する。買付をもらう。契約する。決済する。流れだけを見ると、不動産会社の仕事は、物件を右から左へ流しているようにも見えます。売主と買主をつないで、手数料を受け取る。外から見れば、それだけに見えることもあります。

    実際、そのような仕事の仕方をしている会社もあります。売れる物件を預かる。広告に載せる。問い合わせが来た人を案内する。条件がまとまれば契約する。何も問題がなければ、それでも取引は終わります。

    ただ、不動産の取引は、何も問題がない案件ばかりではありません。むしろ、どの案件も少しずつ問題を抱えています。

    たとえば、売主と買主は、同じものを見ていません。売主は、少しでも高く売りたいと思っています。買主は、少しでも安く買いたいと思っています。

    売主にとっては、長年住んだ家です。思い出があります。お金をかけて直した場所もあります。まだ使えると思っている設備もあります。買主にとっては、これからお金を払って買う建物です。古さが気になります。傷みが気になります。修繕費が気になります。将来売れるのかも気になります。

    同じ建物を見ていても、見えているものは違います。売主は、価値を見ています。買主は、リスクを見ています。どちらの見方にも、理由があります。

    この二人を会わせるだけでは、取引はまとまりません。どちらか一方の言い分を、そのまま相手に伝えるだけでも足りません。その間に入り、何が事実で、何が希望で、何が不安なのかを整理する。それが、不動産会社の仕事だと思っています。

    査定を頼まれたときに、高い金額を伝える。この金額で売れます。すぐに買主が見つかります。うちに任せてください。そう言えば、売主は期待します。媒介契約も取りやすくなるかもしれません。

    ただ、その価格で売れなかったとき、少しずつ価格を下げていくことになります。最初に高い価格を伝えた理由は、いつの間にか曖昧になります。売主は、最初に言っていた話と違う、と感じます。本当は、最初から少し無理があったのかもしれません。

    買主側も同じです。物件を気に入った。事前審査も通った。買付も入れた。ここまで来れば、契約を急ぎたくなります。他の人に取られるかもしれない。早く話をまとめたい。

    しかし、そこで本当に必要なのは、買主の背中を押すことでしょうか。雨漏りの跡がある。建物が傾いている。境界が分からない。増築部分が未登記になっている。将来の建て替えに問題がある。住宅ローン以外にも、修繕費や税金がかかる。こうしたことがあるなら、いったん立ち止まる必要があります。

    買主が気に入っているときほど、悪い情報は耳に入りにくくなります。だから、不動産会社が伝えなければいけません。買わない方がいいと決めるのではありません。この問題を分かった上で、それでも買うのか。そこまで考えてもらうことです。

    売主を期待させること、買主の背中を押すこと。どちらも簡単です。難しいのは、言いにくいことを、契約前に伝えることです。

    不動産会社の仕事は、契約をまとめることだと言われます。もちろん、契約がまとまらなければ仕事になりません。会社も続きません。

    ただ、契約がまとまれば、それでよいのか。売主が知らないまま契約した。買主が理解しないまま契約した。急がせて署名をもらった。問題が出ても、契約書に書いてあると言って終わる。それでも、契約は成立しています。仲介手数料も受け取れます。

    しかし、それを仕事ができたと言ってよいのか。私は、そうは思いません。

    不動産取引は、金額が大きい。そして、やり直しが簡単ではありません。買ってから、やっぱりやめますとは言えません。売ってから、やっぱり返してくださいとも言えません。だから、契約を成立させること以上に、契約する前の判断が大切です。

    だからこそ、ときには契約を止めることもあります。契約がなくなることは、会社にとって痛いことです。調査に時間を使っています。案内もしています。書類も準備しています。

    それでも、途中で大きな問題が見つかることがあります。買主が理解していない。売主の認識が違う。権利関係が整理できていない。住宅ローンは通っても、返済が厳しそうに見える。

    そのようなときに、何も言わずに契約まで進めるのか。一度止めるのか。ここに、その会社の考え方が出ます。契約を止めれば、売上はなくなるかもしれません。しかし、そのまま進めれば、数年後まで問題が残るかもしれません。

    目の前の契約を取るのか。その人の今後を考えるのか。簡単な判断ではありません。私自身、いつも正しい判断ができているとは思っていません。それでも、迷ったときは、契約を取るための説明ではなく、相手が判断するための説明をしようと思っています。

    売主や買主の代わりに、すべてを決めることはできません。売るかどうか。買うかどうか。いくらで売るか。いくらで買うか。最後に決めるのは、本人です。

    ただし、本人が判断するための材料は出せます。良いこと。悪いこと。分かっていること。分からないこと。今すぐ決める必要があること。まだ決めなくてもよいこと。専門家に確認した方がよいこと。取引を進めてもよいのか、一度止めた方がよいのか。それを整理して伝える。

    不動産会社は、物件を売るところではなく、判断を手伝うところではないかと思います。

    こう考えると、仲介手数料の意味も変わってきます。不動産会社が受け取る仲介手数料は、物件を紹介した報酬だと思われることがあります。確かに、紹介も仕事の一つです。ただ、本当に紹介だけであれば、高いと感じるのも当然です。

    仲介手数料には、本来、別の役割があります。物件を調べる。権利関係を確認する。法令上の制限を確認する。道路を確認する。設備や不具合を整理する。売主と買主の希望を調整する。金融機関や司法書士と連携する。契約条件を作る。問題が起きそうな場所を先に見つける。そして、取引が終わるまで責任を持って進める。

    それでも、すべての問題を防げるわけではありません。しかし、問題が起きる可能性を減らすことはできます。仲介手数料は、物件を見せた報酬ではありません。取引を安全に進めるために、調べ、伝え、調整し、判断を支えるための報酬だと思っています。

    不動産会社の実績は、契約件数や売上で語られます。何件売ったか。いくら売ったか。会社を続けるためには必要な数字です。

    ただ、お客様にとって大切なのは、その数字ではないと思います。自分の話を聞いてもらえたか。不利なことも説明してもらえたか。分からないことを、分からないと言ってもらえたか。急がされずに判断できたか。問題が起きたときに、逃げずに対応してもらえたか。契約が終わったあとに残るのは、そこだと思います。

    不動産会社は、家を売る会社です。土地を売る会社です。部屋を貸す会社でもあります。ただ、それだけではありません。人が、大きな決断をするときに横にいる仕事です。

    売主にとっては、長く持ってきた財産を手放す決断です。買主にとっては、これから何十年も支払いを続ける決断です。相続した人にとっては、親の家をどうするかという決断です。住宅ローンの返済に困っている人にとっては、生活を立て直すための決断です。

    その場に立ち会う以上、物件を動かすだけでは足りません。何を売ったかではなく、どう関わったか。不動産会社の仕事は、最後にはそこに残るのだと思います。

    私自身も、契約をまとめることだけが仕事になっていないか。物件を紹介することだけで終わっていないか。相手が判断するための材料を、きちんと伝えられているか。そのことを気を付けながら、今日も不動産の仕事をしています。

    ですから、不動産会社を選ぶときは、物件の数や広告の見え方よりも、聞いたことにどう答えてくれるかを見ていただくとよいと思います。良いところだけでなく、気になるところも話してくれるか。答えが分からないときに、調べてから返してくれるか。そのあたりで、ずいぶん違いが出ます。

    売るか、買うか、まだ決めていない段階でも大丈夫です。今の状況を伺って、どこから確認していけばよいかを並べるところから、お手伝いできます。

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