中古住宅選びは、将来売るときから逆算する。買う前に確認しておきたいこと

    内見の帰り道、家族で話すのは、たいてい今の暮らしのことです。

    この部屋を子ども部屋にしよう。駐車場が二台停められる。駅まで歩ける。予算にも収まりそうだ。

    そこで「この家を、いつか売るときのこと」を話す方は、あまり多くありません。これから住む家を探しているのですから、場所、価格、間取り、住宅ローン、リフォーム費用などを考えるのは自然なことです。

    ただ、中古住宅を購入するときは、もう一つ考えておいた方がよいことがあります。それは、将来その家を売ることになったとき、どのような条件で売却することになるのかということです。

    一生住むつもりで購入しても、事情が変わることがあります。転勤、家族構成の変化、親の介護、住宅ローンの返済、年齢を重ねたあとの住み替えなど、購入したときには想像していなかった理由で住宅を売ることがあります。

    そのときになって、初めて分かる問題もあります。

    建ぺい率や容積率が、建築基準法で定められた上限を超えている。建築確認を受けた図面と、実際の建物が違っている。完了検査を受けていない。増築した部分が登記されていない。前面道路の関係で、建て替えが難しい。

    隣地との境界が分からない。土地と建物の名義が違う。借地権や共有持分が関係している。雨漏りや建物の傾きがある。

    購入するときには住宅ローンを利用できたとしても、将来、次に購入する人が同じように住宅ローンを利用できるとは限りません。特に、建ぺい率や容積率が基準を超えている住宅は、建築された時期によって事情が違います。

    私が実務で見てきた中では、建ぺい率や容積率を超えている住宅の多くは、平成10年以前に建築確認を受けた住宅です。平成11年4月以降に建築された住宅では、建築確認の図面よりも実際の建物を大きく造り、建ぺい率や容積率が基準を超えている住宅は、ほとんど見かけなくなりました。

    ただし、平成11年4月以降に完成した住宅であっても、平成10年以前に建築確認を受けているものはあります。また、完成したあとに増築され、現在の建物が建ぺい率や容積率を超えている場合もあります。

    そのため、建物が完成した年月だけを見て判断することはできません。建築確認を受けた年月、当時の図面、現在の建物の状態まで確認する必要があります。

    この頃から、住宅ローンの取り扱いも変わっていきました。

    それ以前は、建築確認を受けた図面よりも実際の建物が大きくても、建物の床面積や担保価値を見て、住宅ローンを取り扱う金融機関がありました。

    私が建売住宅の販売に関わっていた頃にも、10坪前後の小さな土地に、3階建て、4LDK、駐車場付きという住宅が数多く建てられていました。1階に浴室、洗面所、トイレ。2階にリビングとキッチン。3階に三つの居室。さらに屋根裏収納が付いている。限られた土地の中で、できるだけ多くの部屋を造ることが求められていた時代です。

    建築確認の申請では基準内に収めた図面を提出し、実際には申請した図面よりも大きな建物を建てる。そして、完成後の検査を受けないまま販売する住宅もありました。この経緯については、別の記事でも詳しく書いています。

    当時は、そのような住宅でも住宅ローンを利用できることがありました。建物の床面積が大きければ担保評価が出やすく、住宅ローンの審査が進むこともありました。

    しかし、平成11年4月頃を境に、金融機関の取り扱いは厳しくなっていきました。平成11年4月以降に建築された住宅で、建ぺい率や容積率が建築基準法の上限を超えている場合、一般の銀行で住宅ローンを利用することは難しくなりました。

    それでも、超過率によって取り扱う都市銀行はあります。建ぺい率や容積率のオーバー率がどこまでなら取り扱うかは、銀行によって基準が違います。一方で、一切の超過を取り扱わない都市銀行や地方銀行、信用金庫もあります。

    超過率ではなく、申込人の収入や勤務先などで判断する金融機関もあります。それに加えて、金利を高く設定したノンバンクが取り扱う場合もあります。

    金融機関によって審査基準は違いますので、すべての金融機関が同じ判断をするわけではありません。それでも、建ぺい率や容積率を超えている住宅では、利用できる住宅ローンが限られる可能性が高くなります。

    買主が住宅ローンを利用できなければ、購入できる人も限られます。現金で購入する人や、取り扱い可能な金融機関を利用できる人が、主な購入対象になる場合もあります。

    ただし、建ぺい率や容積率を超えているから、必ず売れない、売りにくいという話ではありません。

    不動産が売れるかどうかは、建物の状態だけでは決まりません。

    販売価格が高く設定されていれば、立地や建物の状態がよい住宅でも売却に時間がかかります。

    室内や敷地に残置物が山のように残っていれば、建物の状態を確認しにくくなります。購入後に何をどこまで片付けなければならないのか分からなければ、買主も判断しにくくなります。

    引渡し時期が合わない。境界についての説明がない。雨漏りや傾きについて、売主も不動産会社も詳しく説明できない。住宅ローンを利用できる金融機関が分からない。

    このような条件が重なれば、購入をためらう人もいます。

    反対に、建物に問題があったとしても、その内容が整理され、価格と条件が合えば、購入を検討する人はいます。

    立地がよい。購入価格が予算に合う。部屋数が多い。今の建物を長く使う予定で、建て替えを考えていない。将来も自分や家族が住み続ける予定がある。賃貸住宅として利用できる可能性がある。現金で購入できる。

    その人の目的や資金計画に合っていれば、選択肢になる住宅もあります。

    大切なのは、問題を知らずに購入するのではなく、内容を理解したうえで判断することです。

    購入価格が低く見えても、将来売却するときに住宅ローンを利用できる買主が限られるのであれば、その点も購入前に考えておく必要があります。反対に、将来の売却条件まで理解し、それでも自分には合っていると判断して購入するのであれば、その選択が間違いとは限りません。

    中古住宅の購入では、今住めるかどうかだけを見るのではなく、将来どのような選択肢が残るのかも確認しておく必要があります。

    住宅ローンは利用できるのか。希望するリフォームはできるのか。増築部分に問題はないのか。建て替えることはできるのか。将来売却するときに、買主へどのような説明が必要になるのか。次に購入する人も住宅ローンを利用できるのか。残置物をどのように扱うのか。どのような状態で引き渡すのか。

    こうしたことを購入前に確認しておけば、購入したあとの選択肢が変わります。

    これは、売却する側にも同じことが言えます。

    売主自身が、住宅の問題を知らないまま売りに出していることもあります。

    昔に増築したことを忘れている。親から相続した住宅なので、建物がどのような経緯で建てられたのか分からない。購入した当時から今の状態だったので、問題があるとは思っていない。建築確認を受けた図面を見たことがない。完了検査を受けているかどうか分からない。家の中に多くの荷物が残っているが、片付けなければ売れないと思っている。

    そのようなことは珍しくありません。知らなかったことを、責められる筋合いはありません。

    残置物があるから、売却できないわけではありません。片付けずに、そのままの状態で売却する方法もあります。

    ただし、残置物を誰が処分するのか。処分費用を誰が負担するのか。残したまま引き渡すのか。売買代金の中でどのように考えるのか。その条件は、先に整理しておく必要があります。

    売却する前に建物や権利関係、残置物、引渡し条件を確認しておけば、買主に伝える内容を整理できます。

    問題がある住宅でも、先に内容を整理し、購入する人にきちんと説明できれば、売却できる可能性はあります。

    反対に、契約の直前になって問題が分かると、買主が不安になります。住宅ローンの審査が止まることもあります。申し込みが取り下げられ、契約そのものが進まなくなることもあります。

    住宅の購入と売却は、別の話に見えます。しかし、購入した住宅は、いつか売却する住宅になるかもしれません。

    購入するときは、今の希望だけでなく、将来の出口まで考えて選ぶ。売却するときは、次に購入する人が判断できるように、住宅の状態、残置物、権利関係、引渡し条件を整理する。

    その両方が必要だと思っています。

    私は、住宅の売却だけではなく、中古住宅の購入についての相談もお受けしています。

    この物件を購入してもよいのか。住宅ローンを利用できるのか。建物に問題はないのか。リフォームして住み続けることができるのか。将来売却するときに、どのような条件が付く可能性があるのか。不動産会社から説明を受けたが、内容がよく分からない。

    そのような購入前の相談です。

    不動産は、建物の状態だけで、売れる、売れないが決まるものではありません。販売価格、立地、残置物、住宅ローン、権利関係、引渡し条件。同じ不動産でも、これらの条件によって売却のしやすさは変わります。

    だからこそ、中古住宅を購入するときは、今の暮らしに合うかどうかだけで判断しない方がよいと思っています。

    将来売却することになったとき、どのような買主が購入できるのか。住宅ローンを利用できる金融機関はあるのか。どのような説明や条件が必要になるのか。

    売却するときになって初めて問題を知るのではなく、購入する前に将来の選択肢まで確認しておく。それが、中古住宅を購入するときに必要な考え方だと思います。

    検討している物件がある方も、まだ探し始めたばかりの方も、資料を見ながら一緒に整理できます。

    買うと決めていない段階で構いません。気になっていることがあれば、お声がけください。

    ※この記事は2026年8月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の取り扱いについては、自治体の建築担当窓口・金融機関・専門家にご確認ください。

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