夜、スマートフォンで「空き家 査定」と検索してみる。
一番上に、一括査定のサイトが出てくる。住所と面積を入れる欄がある。その下に、電話番号の入力欄がある。
そこで指が止まる。入力していいものかどうか、迷う。
空き家を持っていると、「まだ売ると決めていないし、もう少しこのままでいいか」と思うことがあります。売るのか、残すのか、貸すのか。まだ決められない。だから、何もしない。
でも、空き家は人が何もしなくても、少しずつ変わっていきます。雨が降る。風が吹く。夏は暑くなり、冬は冷え込む。庭の草は伸びます。設備は古くなります。雨漏りが起きても、住んでいる人がいなければ気付くのが遅れます。
「今すぐ困っていない」という状態が、ずっと続くとは限りません。
だから私は、売るかどうかは別として、空き家の価格くらいは一度確認しておいた方がいいと思っています。ただし、ここで一つ注意があります。
「とりあえず査定だけ」と思って、一括査定サイトに住所や電話番号を入力する。
すると、その瞬間から話が変わることがあります。
数社の不動産会社から連絡が入る。メールだけならまだいい。電話がかかってくる。出なければ、またかかってくる。別の会社からもかかってくる。中には、「近くまで来たので」「一度ご挨拶だけでも」と、突然訪問してくる業者もあります。
こちらは、「家がいくらくらいなのか知りたかっただけ」なのに、いつの間にか、
「どの会社に売却を任せるのか」
という話になっている。これでは、査定を頼むこと自体が嫌になります。
実際、「査定を頼んだら営業電話が多くて嫌になった」という話は珍しくありません。だから、「不動産会社には相談したくない」「まだ何もしないでおこう」となる。でも、それでは本末転倒です。
問題なのは、査定をすることではありません。
査定の入口を間違えることです。
空き家について最初に知りたいのは、本来もっと単純なことです。この家はいくらくらいなのか。今売るとしたら、どのくらいになるのか。建物を残したまま売れるのか。解体した方がいいのか。貸すという選択肢はあるのか。
まず、そこです。売却を決めるのは、そのあとでいい。
例えば、査定をして1,500万円前後だと分かったとします。そこで初めて、1,500万円なら売る。この金額なら、もう少し持っておく。貸した場合の家賃を調べてみる。家族と相談する。こういう話ができます。
価格を知らなければ、「昔はこの辺も高かった」「親がお金をかけて建てた家だから」「もう少し待てば値段が上がるかもしれない」という感覚だけで考えることになります。
その間にも、空き家は歳を取ります。人間と同じです。今年の家と、3年後の家は同じではありません。屋根も外壁も設備も、少しずつ古くなります。売ろうと思ったときに、「雨漏りしています」「給湯器が動きません」「庭木が伸びています」「建物の傷みが進んでいます」となれば、買う側の見方も変わります。
それでも、「まだ売るかどうか決められない」という方はいると思います。私は、それでいいと思っています。売る必要はありません。
ただ、
何も知らないまま持ち続けることと、価格を知ったうえで持ち続けることは、まったく違います。
査定をして、「今は売らない」と決める。これも一つの判断です。でも、「面倒だから何もしない」「営業されるのが嫌だから何もしない」という状態で数年が過ぎると、あとで困ることがあります。
だから、査定はしておいた方がいい。ただし、電話番号を入力した瞬間から何社もの営業電話が始まるような査定でなくてもいい。
ここまで書いておいて何ですが、私自身も不動産会社をやっています。こう書くと、結局は自分のところに相談してほしいだけだろう、と思われるかもしれません。
それでも書いておきたいのは、価格を知るだけなら、そこまで大がかりな話ではないからです。
例えば、机上査定という方法があります。室内を見ていなくても、おおまかな査定書は作れます。
戸建てなら、物件の所在地、土地の面積、建物の面積、築年数。マンションなら、物件の所在地、マンション名、専有面積。こちらから伝えるのは、これくらいです。あとは不動産会社の側で調べて作ります。
もちろん、中を見ていない分、実際の状態までは反映されていません。傷みが進んでいれば下がりますし、思ったより手が入っていれば上がります。それでも、「だいたいこのあたり」という数字は出ます。
家の中を片づける必要も、誰かに来てもらう必要もありません。まず知りたいのが価格だけなら、ここまでで足ります。
そのうえで、不動産会社を選んで、1社ずつ相談する方法もあります。最初に、「まだ売却は決めていません」「まず価格だけ知りたいです」「電話営業は困ります。連絡はメールでお願いします」と伝えておけばいい。それで態度が変わる会社なら、売却を任せる会社としても一度考えた方がいいと思います。
空き家を売る会社を選ぶ前に、
こちらの話を聞く会社なのか。自分たちの都合で話を進める会社なのか。
査定の段階で、かなり分かります。
寝屋川市や枚方市でも、「まだ売ると決めていないのですが」という前置きから始まるご相談をよくいただきます。その前置きは、まったく必要ありません。決めていないから聞く、で構わないと思っています。
空き家について本当に怖いのは、査定を頼むことではありません。売らされることでもありません。私は、
何も知らないまま時間だけが過ぎ、いざ動こうとしたときに選択肢が減っていること
だと思っています。
「まだ売らない」。それでもいい。「今年はそのまま持っておく」。それでもいい。ただ、今いくらなのか。今どんな状態なのか。今なら何ができるのか。ここまでは知っておく。そのうえで、自分で決める。
空き家は、不動産会社のために売るものではありません。持っている人が、自分のタイミングで判断するものです。
だからこそ、何も知らずに放置するのではなく、営業に追われる査定でもなく、まず自分のために、今の価格を知る。そこから始めればいいと思います。
なお、そもそもなぜ不動産会社は査定のあとに電話をかけたがるのか。会社側にどんな事情があるのかについては、以前、別の記事に書きました。あわせて読んでいただくと、「どこに、どうやって査定を頼むか」を考えやすくなると思います。
急いで決めなくて大丈夫です。所在地と面積、築年数くらいをお知らせいただければ、まず机上査定という形で、おおよその価格からお伝えします。
