空き家を放置すると何が起きるのか

    空き家を放置すると、どうなるのか。

    この相談は、相続や実家の整理の場面でよく出てきます。

    親が住んでいた家。
    相続した実家。
    誰も住まなくなった家。
    施設入所や入院をきっかけに空いた家。

    最初から「放置しよう」と思っている人は、ほとんどいません。

    多くの場合は、

    まだ気持ちの整理がついていない。
    売るか貸すか決められない。
    兄弟姉妹で話がまとまっていない。
    荷物が多すぎて手をつけられない。
    親族の目が気になる。
    思い出がありすぎて動けない。

    こういう理由で、結果的に時間が過ぎていきます。

    その気持ちは、よく分かります。

    ただ、不動産は待ってくれません。

    人の気持ちが止まっている間にも、建物は少しずつ傷みます。
    固定資産税は毎年かかります。
    草木は伸びます。
    近隣との問題が出ることもあります。

    空き家を放置すると何が起きるのか。

    今回は、その現実を整理してみます。

    建物は少しずつ傷んでいく

    空き家で一番分かりやすい変化は、建物の劣化です。

    人が住んでいる家と、誰も住んでいない家では、傷み方が違います。

    人が住んでいれば、窓を開けます。
    水を流します。
    掃除をします。
    異変にも気づきます。

    雨漏りがあれば気づく。
    水漏れがあれば気づく。
    床が沈めば気づく。
    壁にカビが出れば気づく。

    でも、空き家になると、それに気づく人がいません。

    雨漏りが起きても、すぐには分からない。
    水道管に不具合が出ても、すぐには分からない。
    湿気がこもっても、すぐには分からない。
    シロアリの被害が進んでも、すぐには分からない。

    久しぶりに家へ行ってみると、思っていた以上に傷んでいた。

    こういうことは珍しくありません。

    建物は、使っていないから傷まないわけではありません。

    むしろ、使っていないからこそ傷むことがあります。

    草木や庭の管理が負担になる

    空き家で意外と問題になるのが、庭や草木です。

    最初は少し伸びている程度でも、数か月放っておくと一気に伸びます。

    草が伸びる。
    木の枝が隣地へ越える。
    道路にはみ出す。
    落ち葉が近隣へ飛ぶ。
    害虫が発生する。

    そうなると、近隣から連絡が入ることがあります。

    「枝が越境しています」
    「草が伸びすぎています」
    「虫が出ています」
    「落ち葉を何とかしてほしい」

    このような連絡です。

    空き家の所有者にとっては、たまに見に行く家でも、隣に住んでいる方にとっては毎日のことです。

    だから、小さなことでも不満が積もります。

    空き家の管理は、家の中だけではありません。

    外から見える部分。
    道路に面している部分。
    隣地に接している部分。

    ここも管理の対象になります。

    固定資産税は毎年かかる

    空き家を使っていなくても、固定資産税はかかります。

    誰も住んでいない。
    収益も生んでいない。
    売る予定も貸す予定も決まっていない。

    それでも、不動産を所有している限り、税金はかかります。

    最初は、

    「とりあえず今年は払っておこう」

    で済むかもしれません。

    でも、それが毎年続きます。

    1年。
    2年。
    3年。
    5年。

    気づいたときには、何年も固定資産税を払い続けている状態になっています。

    しかも、税金だけではありません。

    草刈り。
    庭木の剪定。
    簡単な修理。
    火災保険。
    交通費。
    片付け費用。

    空き家を持ち続けるということは、少しずつお金が出ていくということです。

    住んでいない家でも、費用は止まりません。

    近隣との関係が悪くなることがある

    空き家の問題で見落としやすいのが、近隣との関係です。

    所有者は遠方に住んでいる。
    でも、空き家の隣には、毎日生活している人がいる。

    この違いは大きいです。

    草が伸びている。
    枝が越境している。
    雨どいが壊れている。
    外壁が落ちそう。
    瓦がずれている。
    不審者が入っているように見える。
    ゴミを捨てられている。

    こういうことが起きると、近隣の方は不安になります。

    最初は我慢してくれていても、時間が経つと感情が変わります。

    「持ち主は何をしているのか」
    「なぜ放ったらかしなのか」
    「何かあったらどうするのか」

    こういう気持ちになります。

    不動産の問題は、建物だけではありません。

    近隣との関係も含まれます。

    空き家を放置すると、知らない間に近隣との関係が悪くなっていることがあります。

    荷物が多いほど、後で動きにくくなる

    実家の空き家で大きな問題になるのが、荷物です。

    家具。
    衣類。
    食器。
    布団。
    写真。
    書類。
    仏壇。
    思い出の品。

    親が暮らしていた家には、たくさんの物が残っています。

    最初は、

    「また時間があるときに片付けよう」

    と思います。

    でも、時間が経つほど片付けは重くなります。

    家族の気持ちの整理も必要です。
    何を残すか、何を処分するかも迷います。
    兄弟姉妹で考えが違うこともあります。
    遠方だと、片付けに行くこと自体が負担になります。

    そして、建物が傷んでくると、片付け作業もしにくくなります。

    湿気で荷物が傷む。
    カビが出る。
    床が弱くなる。
    虫が出る。
    室内の空気が悪くなる。

    片付けは、先に延ばすほど楽になるわけではありません。

    むしろ、先に延ばすほど大変になることがあります。

    売るにも貸すにも条件が悪くなることがある

    空き家を放置すると、いざ売ろう、貸そうと思ったときに条件が悪くなることがあります。

    建物が傷んでいる。
    雨漏りがある。
    水回りが使えない。
    庭が荒れている。
    室内に荷物が多い。
    近隣から苦情が出ている。

    こうなると、買う側や借りる側の印象は悪くなります。

    売却する場合でも、修理費や解体費を見込まれることがあります。
    貸す場合でも、改装費が大きくなります。

    「もう少し早く動いていれば」

    そう感じることもあります。

    もちろん、不動産は物件ごとに違います。

    古くても売れる家はあります。
    荷物が残っていても売却できる場合はあります。
    改装して貸せる家もあります。

    ただ、放置して良くなることはあまりありません。

    時間が経つほど、選択肢が狭くなることがあります。

    相続人が増えると、話がまとまりにくくなる

    空き家を放置している間に、相続の関係が複雑になることもあります。

    最初は兄弟姉妹だけの話だった。
    でも、そのうち誰かが亡くなる。
    その子どもたちが相続人になる。
    さらに関係者が増える。

    こうなると、話し合いが難しくなります。

    会ったことがない相続人が出てくることもあります。
    連絡が取りにくい人がいることもあります。
    考え方がまったく違うこともあります。

    売却するにも、賃貸にするにも、名義や同意の問題が出てきます。

    空き家を放置するということは、建物だけを放置しているわけではありません。

    家族の問題も、そのまま先送りしていることがあります。

    時間が経てば自然に解決することもありますが、不動産の場合は、時間が経つほど複雑になることも多いです。

    空き家は「使っていない家」ではなく「管理が必要な不動産」

    空き家というと、

    「誰も住んでいない家」

    と思われるかもしれません。

    でも、現場で見ていると、空き家は単に使っていない家ではありません。

    管理が必要な不動産です。

    建物を見に行く。
    庭を管理する。
    近隣へ迷惑をかけない。
    税金を払う。
    荷物を整理する。
    名義を確認する。
    今後どうするかを考える。

    これらが必要になります。

    使っていないから何もしなくていい、ではありません。

    使っていないからこそ、定期的に確認する必要があります。

    大切なのは、すぐに売ることではない

    空き家を放置しない方がいいと言うと、

    「すぐに売らないといけないのか」

    と思われるかもしれません。

    そうではありません。

    すぐに売る必要がない家もあります。
    貸した方がいい家もあります。
    家族で使う予定がある家もあります。
    少し時間を置いた方がいい場合もあります。

    大切なのは、何も分からないまま放っておかないことです。

    今の状態を知る。
    建物の状態を確認する。
    荷物の量を把握する。
    相続登記や名義を確認する。
    家族の考えを聞く。
    売った場合、貸した場合、残した場合を比べる。

    まずはここからです。

    結論を急ぐ必要はありません。

    ただ、現状を知らないまま時間だけが過ぎていくのは避けた方がいいです。

    空き家の問題は、早めに整理することで選択肢が残る

    空き家を放置すると、建物の劣化、税金、草木の管理、近隣との関係、荷物、相続人の増加など、いろいろな問題が出てきます。

    ひとつひとつは小さく見えるかもしれません。

    でも、それが重なると動きにくくなります。

    だから私は、空き家の相談では、

    「まず今の状態を整理しましょう」

    とお伝えしています。

    早く売るためではありません。
    無理に貸すためでもありません。
    家族に結論を急がせるためでもありません。

    後から困らないようにするためです。

    空き家は、放っておくほど選択肢が少なくなることがあります。

    売る。
    貸す。
    残す。
    管理する。
    片付ける。
    家族で使う。

    どの選択をするにしても、早めに状態を確認しておくことが大切です。

    相続した実家や空き家のことで悩んでいる方は、まず一度、今の状況を整理してみてください。

    そして、家族だけでは判断が難しいときは、早めに相談してください。

    空き家の問題は、建物だけの問題ではありません。

    家族の気持ち。
    管理の負担。
    お金のこと。
    次の世代への負担。

    そこまで含めて考えることが大切です。

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