退去時の原状回復。貸主負担と借主負担はどこで分かれるのか

    入居者が退去した部屋に入って、私が最初にするのは鍵を受け取ることではありません。玄関に立って、室内の状態を見ていくことです。

    これは、部屋を貸している家主さんにも、これから退去する借主さんにも関わる話です。退去のときに出てくる費用の負担を、どこを見て考えているのかをお伝えします。

    賃貸物件から入居者が退去するとき、寝屋川市周辺の物件で、家主さんの代わりに立会いに行くことがあります。玄関から各部屋を見ていき、壁や建具などに穴や大きな凹みがないか。ガラスにひびや割れがないか。入居したあとに無断で造作されたところがないか。落書きや汚れ、カビなども確認します。

    ただ、退去時に汚れや傷があったからといって、すべて借主さんの負担になるわけではありません。何年も住んでいれば、普通に生活していても汚れたり、古くなったりします。

    たとえば、テレビや冷蔵庫などを置いていた後ろのクロスが黒くなる、いわゆる電気ヤケがあります。こうした通常の生活によって生じる汚れや劣化については、基本的に貸主側の負担になります。

    一方で、壁に大きな穴を開けている。建具を壊している。無断で造作している。落書きがある。こうしたものについては、どのようにしてできたものなのかを確認します。

    カビも同じです。カビがあるから借主さんの負担、と単純に決めるわけではありません。

    建物の状態や結露などが原因なのか。それとも、結露が出ていることを分かっていながら、そのままにしてカビが広がったのか。原因によって負担の考え方が変わります。

    こうしたときに説明しやすいのが、大阪府が作成している「賃貸住宅の原状回復トラブルを防止するために」という冊子です。この冊子には、貸主負担になるものと借主負担になるものが、部屋のイラストを使って細かく紹介されています。

    たとえば、通常使用によるクロスの電気ヤケは貸主負担。結露を放置して広がったカビなどは借主負担になる例として書かれています。

    退去の立会いで、「これは借主さんの負担です」「これは家主さんの負担です」と口頭だけで説明するより、こうした冊子を一緒に見ながら説明した方が分かりやすいことがあります。

    もちろん、冊子に書いてある例だけですべて決まるわけではありません。実際の傷や汚れが、いつ、どのようにしてできたのか。入居したときはどのような状態だったのか。契約書にはどのように書かれているのか。そうしたことも確認します。契約の内容によって、取り扱いが変わることもあります。

    ですから、傷や汚れがあれば全部が借主さんの負担になるとも言えませんし、逆に、借主さんは何も払わなくていいとも言えません。どちらかに決めつけず、一つずつ理由をたどっていくことになります。

    退去の立会いは、「ここが汚れているから請求します」と、その場で次々に決めるためのものではありません。

    まず、退去した時点で室内がどのような状態になっているのかを確認する。必要であれば写真を撮る。気になるところがあれば、借主さんにも状況を確認する。

    ひと通り確認が終わったら、最後に鍵を受け取ります。そして、確認した内容を家主さんへ報告します。

    退去した部屋を見れば、クロスを張り替えなければならない。畳を替えなければならない。ハウスクリーニングをしなければならない。そういう工事が必要になることはあります。

    でも、次の人に貸すためにきれいにする費用と、借主さんが負担する原状回復の費用は同じではありません。ここを一緒にしてしまうと、退去時のトラブルになりやすくなります。

    だから退去の立会いでは、汚れているか、傷があるかを見るだけではなく、なぜ、こうなったのかまで確認します。そして、貸主負担なのか、借主負担なのかを考えるときには、大阪府版のガイドラインなども確認しながら判断していきます。

    理由のところを飛ばして金額だけを先に出すと、あとで話がこじれます。だから、時間はかかっても、なぜそうなったのかまで見ておきたいと思っています。

    もし今、管理を任せている物件の退去立会いについて、どんな基準で貸主負担と借主負担を分けているのか分からない。立会いの結果、何を確認してもらえたのか報告がない。そんなことがあれば、一度確認してみてもいいと思います。

    借りている側でも、退去のときに示された金額の内訳が分かりにくいことがあります。その場ですべてを判断しなくても大丈夫です。どこがどういう理由でその負担になっているのか、順番に聞いていけば、話は整理できます。

    退去は、貸す側にとっても借りる側にとっても、何度も経験することではありません。だから、分からないのが当たり前です。どこから確認すればいいのか、というところから一緒に整理することもできます。

    ※この記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の取り扱いについては、専門家にご確認ください。

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