相続の手続きが進んで、親が残した書類を一つずつ確認していく。引き出しや戸棚を開けて、封筒の中身を見ていく。それでも、賃貸借契約書だけが出てきません。
その家には以前から借主さんが住んでいます。家賃も毎月きちんと入っている。それなのに、どんな条件で貸していたのかを示す書類が見つからない。
「家賃がいくらなのかは、通帳を見れば分かる。でも、それ以外の契約内容が分からない」
こうなると、不安になると思います。慌てなくて大丈夫です。
まず、契約書が手元に見つからないからといって、すぐに賃貸借契約がないということにはなりません。実際に借主さんが住んでいて家賃を支払っているのであれば、契約書が見つからないというだけで、賃貸借そのものがなかったとは言えません。
問題は、
「どんな条件で貸していたのか」
が分からないことです。
家賃はいくらなのか。共益費や駐車場代はあるのか。敷金や保証金を預かっていたのか。それとも礼金だけだったのか。退去するときに敷引きの取り決めがあるのか。修繕について何か特約を決めていたのか。
家賃が毎月振り込まれているからといって、こうした契約内容まで分かるわけではありません。
もし借主さんから、「入居するときに、こういう約束をしました」と言われても、こちらに契約書がなければ、すぐには確認できません。
親と借主さんの間では分かっていたことでも、相続した自分には分からない。ここが、賃貸中の不動産を相続したときに困るところです。
そこで、まず残っている資料を探します。親が使っていた通帳を見れば、毎月いくら振り込まれているのか、振込名義は誰なのかが分かることがあります。不動産会社や管理会社を通して契約していたのであれば、契約書の控えが残っている可能性もあります。
家賃保証会社を利用していれば、その資料が残っていることもあります。過去の更新書類、家賃変更の通知、借主さんとの手紙やメールなどから、契約内容が分かることもあります。
それでも契約書が見つからなければ、借主さんが持っている可能性があります。貸主側の契約書が見つからなくても、借主さんの手元には契約時に渡された契約書が残っていることがあります。
その場合は、「相続で所有者が変わり、契約内容を確認したいので、お手元の契約書を見せていただけませんか」とお願いして、写しを取らせてもらう方法もあります。
契約書が見つからないと、「それなら、新しく契約書を作ればいいのでは」と思うかもしれません。
でも、ここは急がない方がいいところです。
以前の契約条件が分からないまま新しい契約書を作ってしまうと、これまでの内容と違うものになってしまう可能性があります。借主さんから、「以前はそんな条件ではありませんでした」と言われることも考えられます。
親と借主さんの間では分かっていた約束を、相続した側が知らないだけかもしれません。だから、まずはこれまでの契約内容をできるだけたどることから始めます。
相続した不動産が空き家であれば、売る、貸す、残すというところから考えることができます。でも、すでに人に貸している不動産を相続した場合は少し違います。
相続した時点ですでに借主さんが住んでいて、賃貸借が続いています。
親が元気なうちは、「家賃も入っているし、特に問題はない」と思っていたかもしれません。ところが、相続して自分が管理する立場になった途端、今まで親がしていたことを自分が引き継がなければならなくなります。
寝屋川市や枚方市でも、賃貸中の家を相続されて、契約の中身が分からないというご相談をいただくことがあります。
契約書が見つからないと、最初は、
「何も分からない」
と感じるかもしれません。
でも、通帳を見る。不動産会社や管理会社に確認する。保証会社の資料を探す。過去の手紙やメールを見る。必要であれば、借主さんに契約書の写しがないか確認する。一つずつ確認していけば、分かることは出てきます。
大切なのは、分からないまま新しい条件を決めてしまわないことです。
親から引き継ぐのは、不動産だけではありません。借主さんとの間で決めていた約束も一緒に引き継ぎます。その約束が分からないのであれば、まずそこを整理するところから始めればいいと思います。
名義の手続きと、契約の中身を確かめる作業。相続した直後は、この二つが同じ時期にやってきます。どちらも一度に片付けようとすると負担が大きいので、分かるところから順に手をつけていけば十分だと思います。
手元の資料を見ても契約内容がはっきりしないときは、何から確認すればいいかを一緒に整理することもできます。まだ何も決めていない段階でも構いません。
※この記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の取り扱いについては、司法書士などの専門家にご確認ください。
