使っていない実家や田畑を子どもに残す前に考えたいこと

    毎年届く固定資産税の納税通知書。その中に、もう何年も使っていない家や田畑の分が入っている。そんな状態のまま、何年も過ぎているという方もいます。

    子どものころに両親と暮らした家。近くには田んぼや畑があり、昔は親が手入れをしていました。でも今は、誰も住んでいません。田んぼも畑も使っていません。

    相続して自分の名義にはなったものの、今の暮らしはその土地から離れている。仕事もあり、家庭もある。頻繁に帰って草刈りをしたり、家の中を確認したりするのは簡単ではありません。

    それでも、先祖代々の土地だから手放しにくい。

    自分の代で売っていいのだろうか。子どもに残しておいた方がいいのではないか。そんなことを考えて、そのまま時間が過ぎていきます。

    固定資産税は毎年払う。草は伸びる。木も大きくなる。家も少しずつ傷んでいく。台風が来れば屋根が気になり、近所から連絡があれば何かあったのかと心配になります。

    使っていないのに、気持ちのどこかではずっと気になっている。

    一方で、自分が元気なうちに整理できれば、この状態は変わります。

    売れるのか。貸せるのか。近所の方が使ってくれるのか。田んぼや畑なら、誰か耕してくれる人はいないのか。まず調べるだけでも、次に何をすればいいのかが見えてきます。

    子どもに資産を残すことは、よいことだと思います。ただ、残すものが本当に資産なのかは、一度考えた方がいいと思っています。

    誰も住まない家。誰も使わない土地。遠く離れていて、管理するだけで時間とお金がかかる不動産。

    それを子どもが相続したとき、この家をどうしたらいいのか、この土地は売れるのか、草刈りは誰がするのか、固定資産税だけを払い続けるのか、と考えることになります。今、自分が考えていることを、そのまま子どもが考えることになるかもしれません。

    資産を残したつもりでも、実際には判断しなければならない不動産を残してしまうことがあります。

    以前、山の中にある別荘用地を見に行ったことがあります。

    一時期、別荘地として販売され、多くの方が土地を購入した場所です。現地へ向かう道路は荒れ、周りにはほとんど建物がありません。木が生い茂り、土地がどこからどこまでなのか分かりにくくなっているところもありました。

    購入した当時は、いつか別荘を建てよう、土地だから持っていてもいいだろう、と考えたのかもしれません。しかし、結局建物は建てなかった。そのまま何十年も経ち、今では使う予定もない。

    購入したときの金額と比べれば、売却価格はかなり安くなるかもしれません。そうなると、そんな値段なら売らない、という気持ちになります。その気持ちは自然なものだと思います。

    でも、ここで考えたいことがあります。

    安くても買ってくれる人がいる今と、何年か後に買ってくれる人がいなくなるのとでは、状況が違います。

    周りの土地も同じように相続され、所有者が次々と売りに出せば、売りたい土地が増えていきます。一方で、その地域の土地を欲しい人が増えるとは限りません。そうなると、今より売りにくくなることもあります。

    いくらで売れるのかだけではなく、これから誰が使うのかを考えることも大切です。自分が使うのか。子どもが使うのか。貸せるのか。近所の方が使うのか。

    どうしても引き取り手が見つからない土地については、相続土地国庫帰属制度というものもあります。相続や遺贈で取得した土地を、国に引き取ってもらう制度です。2023年4月から始まりました。

    ただ、どんな土地でも引き取ってもらえるわけではありません。建物が建っている土地は対象外です。抵当権などが付いている土地、境界がはっきりしない土地も申請できません。相続や遺贈で取得した土地に限られるので、自分で買った土地や生前に贈与を受けた土地は使えません。

    費用もかかります。申請のときの審査手数料に加えて、引き取ってもらえることになった場合には負担金を納めます。負担金は、国が10年分の管理費用として算定するもので、土地の種類や場所によって金額が変わります。

    つまり、いらないから国に渡す、という簡単な話ではありません。それでも、選択肢の一つとして知っておく価値はあると思います。使えるかどうかは条件次第ですので、詳しいことは土地のある場所を管轄する法務局へご相談ください。

    誰も使う予定がないのであれば、なぜ持ち続けるのか。そこを一度考えてみてもいいと思います。

    先祖代々の土地だから。親から相続した家だから。簡単に手放せない気持ちはあると思います。責められることでは、ありません。

    でも、土地をずっと所有し続けることだけが、受け継いだものを大切にする方法ではありません。

    自分の代で整理し、子どもには管理の負担を残さない。それも一つの引き継ぎ方です。

    実家へ帰るたびに、また草が伸びているな、そろそろ何とかしないとな、と思っているのであれば、その「いつか」を子どもの代まで先送りしないという考え方もあります。

    売るかどうかを、すぐに決める必要はありません。まずは今、その不動産がどんな状態なのか。売れるのか。貸せるのか。使ってくれる人がいるのか。そこを確認するだけでも構いません。

    まだ売るとも残すとも決めていない段階で、かまいません。書類がそろっていなくても、場所が遠くても、お話をうかがうことはできます。今どうなっているのかを一緒に整理して、そのうえで考えていただければと思います。

    一人で考えていると、同じところを何年も行き来してしまうことがあります。一度どなたかに話してみると、次に何をすればいいのかが見えてくることもあります。

    ※この記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の取り扱いについては、土地のある場所を管轄する法務局などの窓口にご確認ください。

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