テーブルの上に、開けていない封筒が何通か重なっている。督促状という文字だけが目に入って、そのままにしてしまった。そういう状態の方も、いると思います。
中身を見るのがつらいときは、誰でも手が止まります。責められることでは、ありません。それでも、そこから先で何が起きるのかを知っておくと、封筒を開ける気持ちの準備はしやすくなります。今回はその流れを整理していきます。
まず知っておいてほしいのは、住宅ローンを滞納したからといって、すぐに家が競売になるわけではないということです。その前に、いくつかの段階があります。
最初は、金融機関から電話がかかってきたり、支払いを促す書類が届いたりします。口座への入金を忘れていたなど、一時的な遅れであれば、金融機関へ連絡し、指定された方法で支払うことで解消できる場合があります。
ただし、1回くらいなら何も問題はない、と考えない方がいいと思います。支払いが遅れた事実がどのように扱われるかは、金融機関や契約内容などによって違うからです。大切なのは、遅れたことに気付いたら、そのままにしないことです。
問題は、そこから滞納が続いていった場合です。金融機関から届く書類の内容も、少しずつ変わっていきます。
督促状や催告書など、支払いを求める書類が届くことがあります。滞納している金額や支払期限が書かれ、遅延損害金が加算される場合もあります。さらに、このまま支払いがなければ残っている住宅ローンを一括で請求することになります、という内容の通知が届く段階へ進むことがあります。
ここで出てくるのが、期限の利益という言葉です。少し分かりにくい言葉なので、簡単に説明します。
住宅ローンを3,000万円借りたからといって、翌月に3,000万円全部を返すわけではありません。毎月決められた日に、決められた金額を返していきます。契約どおり返済している限り、将来の返済日が来るまではその分をまだ払わなくていい、という利益があります。これが期限の利益です。
ところが、一定の条件に該当して期限の利益を失うと、これまでのような分割払いではなく、残っている住宅ローンをまとめて返してください、という状態になります。これを期限の利益の喪失といいます。
住宅ローンの滞納が続いている状態で、残っている住宅ローンを一括で返済できる方は、ほとんどいないと思います。では、一括返済できなければどうなるのでしょうか。
保証会社を利用している住宅ローンであれば、代位弁済という手続きへ進むことがあります。住宅ローンを借りるときに保証料を支払った記憶がある方もいると思います。その保証会社が、住宅ローンを借りている人に代わって、金融機関へ残っている債務を支払います。これが代位弁済です。
ただ、ここで勘違いしないでほしいことがあります。保証会社が払ってくれたから、住宅ローンがなくなるわけではありません。
金融機関に対する債務がなくなる代わりに、今度は保証会社から返済を求められることになります。しかも、今まで銀行へ毎月10万円払っていたから、これから保証会社へ10万円ずつ払えばいい、という単純な話ではありません。保証会社は、代位弁済した金額について返還を求める権利を持ちます。ここまで来ると、最初のころのような毎月の住宅ローン返済とは、状況が変わっています。
そして、この間にもう一つ考えておかなければならないのが、信用情報です。
住宅ローンの返済状況は、信用情報機関に登録されることがあります。例えばCICでは、返済日から61日以上または3か月以上の支払いの遅れがある場合などを異動としています。また、保証会社による保証履行が行われた場合も、信用情報に記録されることがあります。そうなると、新たにクレジットカードを作ったり、車や住宅などのローンを申し込んだりしたときの審査に影響する可能性があります。
では、ここまで進んだら、もう何もできないのでしょうか。そうとは限りません。ただし、最初のころと比べれば、選択肢は少なくなってきます。
まだ期限の利益を失う前で、滞納している金額を解消できるのであれば、まず金融機関に相談します。
ここで大切なのは、とりあえず別のところから借りて返せばいい、と考えないことです。滞納が始まる前の段階でできることは別の記事にまとめていますが、そこでも同じことを書きました。住宅ローンを払うために新たな借金を増やすと、住宅ローンだけだった問題が、カードローンやその他の借金にまで広がることがあります。
滞納している金額がいくらなのか。それを払えば正常な返済に戻れるのか。戻ったあと、毎月の住宅ローンを本当に払い続けられるのか。ここまで考える必要があります。
例えば、滞納分を何とか30万円払ったとしても、翌月から毎月10万円の住宅ローンを払えないのであれば、問題を一か月先送りしただけです。ですから、金融機関へ相談するときは、滞納分をどう払うかだけではなく、その後、毎月いくらなら返済できるのかまで一緒に考えることが大切です。
一方で、住宅ローンだけなら何とか払える。しかし、カードローンやクレジットなど、ほかの借金の返済が大きく、生活が回らなくなっている。そういう方もいます。
住宅ローン10万円。カードローン5万円。クレジットの返済3万円。その他の借入れ2万円。毎月20万円を返済していて生活ができない。こういう場合、住宅ローン以外の借金を整理することで家を残せないか、という考え方も出てきます。
その方法の一つが、個人再生です。個人再生には、一定の条件を満たせば、住宅ローンを返済しながら、住宅ローン以外の借金を整理し、自宅を残せる可能性がある制度があります。
ただし、個人再生をすれば家を必ず残せる、ということではありません。住宅ローンの状況。ほかの借金の金額。収入。自宅に設定されている担保。不動産の価値。さまざまなことを確認する必要があります。
そして、個人再生は裁判所を利用する法的な手続きです。ここから先は、不動産だけの知識では判断できません。債務整理は弁護士や司法書士の仕事であり、不動産会社の仕事ではありません。不動産会社ができるのは、不動産をどうするかという部分と、必要なときに専門家におつなぎするところまでです。個人再生がどういう制度で、どんな場合に家を残せる可能性があり、逆にどんな場合に難しいのかは、別の記事であらためて整理します。
いま自分がどの段階にいるのか、それ自体が分からないという方もいると思います。届いている書類の名前を読んでも、それが何を意味するのかは、なかなか分かりません。慌てなくて大丈夫です。
まだ何も決まっていない段階でも、状況を話すところから始められます。届いている封筒を一緒に確認して、いまどこまで進んでいるのかを整理するところからでも構いません。
※この記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。制度の要件や金融機関の取り扱いは変わることがあります。個別の状況については、弁護士・司法書士・金融機関にご確認ください。
