返済日が近づくと、通帳の残高を何度も確かめてしまう。金融機関から届いた封筒を、開けないまま置いてある。電話が鳴ると、どこからの番号かを先に見てしまう。
住宅ローンの支払いが厳しくなると、こういう日が続きます。誰にも言えないまま月末が来て、また次の月末が来る。相談が遅れるのには、それぞれ理由があります。責められることでは、ありません。
この記事から何回かに分けて、住宅ローンの支払いが難しくなったときに何が起きるのか、そして競売になる前にどんな方法を考えることができるのかを書いていきます。
道の選び方は、いくつかあります。何もしないまま、時間が過ぎるのを待つ。住宅ローンの支払いを止めたまま、手続きが進んでいくのを待つ。弁護士など法律の専門家に相談して、債務整理や自己破産、個人再生などを考える。不動産会社に相談して、売却や任意売却を考える。
ただ、どの道を選ぶにしても、先に確かめておきたいことがあります。家を手放すことに対して、気持ちの整理はついていますか。そんなに簡単に手放しても、悔いは残りませんか。
まだ、手放さずに済む方法を確認していないのではないでしょうか。
私は、マイホームを手放すことを先に考えるよりも、手放さずに住み続けられる方法がないかを、まず確認したいと思っています。できることを確認してから、それでも難しいのであれば売却を考える。その順番でも遅くはありません。
もちろん、これからお話しする方法で、すべての方が家を残せるわけではありません。収入も違います。住宅ローンの残高も違います。家の価格も違います。滞納している期間も違います。
何より、その家をこれからも残したいのか、それとも一度手放して生活を立て直したいのか。考え方も人によって違います。ですから、このシリーズで書く方法が100%の正解というわけではありません。いくつもある選択肢の中の一つとして読んでいただければと思います。
もし今すでに気持ちの整理がついていて、マイホームを手放し、新しい生活を始める決断ができているなら、無理に家を残す必要はありません。家を持ち続けることだけが、生活を守る方法ではないからです。
もう一つ、これだけは先にお伝えしておきたいことがあります。
マイホームを手放さないために、借金と引き換えに自分の命を絶つようなことは、絶対にしないでください。
家のことより先に、話を聞いてくれるところがあります。
よりそいホットラインは 0120-279-338、#いのちSOS は 0120-061-338 です。どちらも通話料はかかりません。よりそいホットラインと#いのちSOSは24時間つながります。お金のことでも、暮らしのことでも、まず話を聞いてもらえます。
家をどうするかは、そのあとで構いません。
家を残すことよりも、家族の生活の方が大切です。もし今、思い詰めてしまうほど追い込まれているのであれば、家のことより先に、専門の相談窓口や周囲の人を頼ってください。
住宅ローンの問題は、方法を探すことができます。
今まで家族で暮らしてきた家。家族の思い出が詰まった部屋。子どもの成長とともに過ごしてきた空間。できることなら大切にしたいと思うのは、自然なことだと思います。
手放さず、そのまま住み続けられる方法があるのなら、一度は確認してみる。最終的に手放すことになったとしても、できることを確認してから決めた方が、後悔は少ないと思います。
では、なぜ住宅ローンの支払いが難しくなったのでしょうか。ここを最初に考える必要があります。
会社の業績が悪くなって収入が減った。転職して給与が下がった。病気やけがで働けない期間があった。子どもの教育費など、家計の支出が増えた。住宅ローンを組んだ当時とは、生活そのものが変わってしまった。理由はいろいろあります。
ここで一つ、少し厳しいことも書きます。
もし住宅ローンを組んだ当初から、毎月の返済がぎりぎりだったのであれば、家を残すことだけにこだわらない方がよい場合があります。これから収入が増える見込みがあるなら話は別です。しかし、今後も現在の収入が続き、住宅ローンを払うたびに生活費が足りなくなるのであれば、無理を重ねることが本当に家族のためになるのかを考える必要があります。
売却する。場合によっては任意売却を検討する。そして生活を立て直す。それも一つの方法です。
任意売却では、売却条件や債権者の判断などによって転居に必要な費用が認められる場合もありますが、必ず受け取れるものではありません。そこを最初から当てにしてはいけません。
一度家を手放したからといって、そこで終わりでもありません。生活を立て直し、将来また無理のない返済額で購入できる住まいを考えることもできます。
ただ、「何年経てば必ず住宅ローンが組める」とは言えません。信用情報の登録期間だけではなく、その時点での収入、勤務状況、年齢、自己資金、借入れの状況、金融機関の審査基準などによって変わるからです。
一方で、これまでは問題なく住宅ローンを払えていた。ところが、何らかの事情で最近になって返済が厳しくなった。まだ滞納していない。あるいは、遅れ始めたばかり。この場合は、できることが残っている可能性があります。
住宅金融支援機構でも、収入の減少などによって返済が難しくなった場合に、返済期間の延長などによって毎月の返済額を減らす返済方法変更のメニューを設けています。もちろん、すべての住宅ローンで同じ対応になるわけではありませんし、申し込めば必ず変更してもらえるわけでもありません。金融機関や住宅ローンの商品、現在の返済状況によって対応は異なります。
だからこそ、まだ滞納していない、あるいは滞納が始まったばかりの段階で、借入先に相談することが大切です。この段階で具体的に何をすればいいのかは、別の記事にまとめています。
最後に、一つだけ触れておきたいことがあります。
住宅ローンの返済に困り始めると、任意売却を扱う不動産会社や、債務整理を扱う法律事務所など、さまざまな相談先が目に入るようになります。
私自身も、大阪の寝屋川市で不動産会社をしていて、住宅ローンの返済が難しくなった方から相談を受け、任意売却を扱うことがあります。売買が成立すれば、仲介手数料をいただきます。仕事として行っている以上、そこに報酬が発生すること自体は普通のことです。
だからこそ、相談する側には一つ知っておいてほしいことがあります。
相談した相手が、「この家を残せる方法はないか」まで一緒に考えてくれているのか。それとも、「どうやって売るか」から話が始まっているのか。ここは分けて見た方がよいと思います。
それから、もう一つ。債務整理や自己破産、個人再生は、弁護士や司法書士の仕事です。不動産会社の仕事ではありません。不動産会社ができるのは、不動産をどうするかという部分と、必要なときに専門家におつなぎするところまでです。ここは、はっきりさせておきたいところです。
家を残せるのか。売った方がよいのか。法的な手続きを考えた方がよいのか。最初から答えを一つに決めるのではなく、現在の状況を整理してから考える。お伝えしたいのは、これです。
何もしないで待つのか。今のうちに確認して動くのか。動くのであれば、まだ選べる方法が残っているかもしれません。
まだ何も決めていない段階でも大丈夫です。返済表や残高の正確な数字が手元にそろっていなくても構いません。いまどういう状況で、これから何が心配なのか。それを話すところから始められます。
慌てなくて大丈夫です。ただ、確認だけは早いほど、選べる道が多く残ります。
※この記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。制度の要件や金融機関の取り扱いは変わることがあります。個別の状況については、弁護士・司法書士・金融機関にご確認ください。
