実家の鍵を預かったまま、自宅の引き出しに入れている。そういう方は、少なくありません。
親が亡くなってから、実家のことを考えないといけない。それは分かっている。でも、毎日の仕事があります。自分の家族の生活があります。子どものこと。体調のこと。親戚との付き合い。そうして日々を過ごしているうちに、実家のことはついつい後回しになっていきます。
誰かが悪いわけではありません。
「片付けないといけない」「兄弟姉妹とも話さないといけない」「家の中も見に行かないといけない」。頭では分かっている。でも、今日しなくても困らない。明日でもいい。来月でもいい。落ち着いてからでいい。
そう思っているうちに、半年が過ぎる。一年が過ぎる。そして気がつけば、誰も住んでいない実家に、荷物が残ったままになっています。
庭の草は伸びている。郵便物も気になる。近所の目も気になる。固定資産税だけは毎年かかる。
でも、いざ動こうとすると、また手が止まります。
家の中には、親が使っていた家具があります。服があります。写真、食器、書類、仏壇。捨てていいものなのか。残すべきものなのか。兄弟姉妹に確認した方がいいのか。そう考えると、片付けることさえ簡単ではありません。
それに、兄弟姉妹に実家の片付けを切り出すのも、思っている以上に難しいものです。
「そろそろ片付けた方がいいのでは」「一度、家の中を見に行かないといけないのでは」。そう言った瞬間に、「じゃあ、あなたがすれば」と言われてしまうかもしれない。言い出した人が、そのまま全部を背負うことになる。そう思うと、なかなか最初の一言が出せません。
本当は、みんなで考えたいだけなのに。本当は、一人で抱えたいわけではないのに。片付けの話を出しただけで、自分の役目になってしまう。そう感じるから、言えなくなることがあります。
また、実家のことを考えるには、少し気持ちの整理も必要です。
親が亡くなってすぐに、家をどうするかという話はしにくいものです。売却という言葉を出すだけで、冷たい人間のように思われるのではないか。親のものを早く処分したい人だと、思われるのではないか。そう考えると、つい後回しになります。
「まだ時期が早い」「もう少し落ち着いてから」「今はまだ話す時ではない」。そう思う気持ちも、よく分かります。
ただ、そのまま時間が過ぎていくと、今度はますます言い出しにくくなることがあります。最初は、まだ早いと思っていた。でも、数年経つと、今さらどう切り出せばいいのか分からなくなる。そうして、実家のことがそのままになっていきます。
長男が考えるだろう。近くに住んでいる人が動くだろう。親と一番関わっていた人が、何とかするだろう。誰かがそう思い、他の誰かもまたそう思っている。その間にも、実家だけがそのまま残っていきます。
相続した実家のことは、すぐに困る問題ではないように見えます。でも、後回しにしている間にも、家は少しずつ変わります。
人が住まない家は、思っている以上に傷みます。空気が動かない。水を使わない。雨漏りに気づかない。庭の草が伸びる。建物のにおいも変わってきます。
そして、家の状態だけではなく、相続人の状況も変わっていきます。体調が悪くなる方もいます。遠方へ引っ越す方もいます。家族の事情が変わる方もいます。話し合うこと自体が、前より難しくなることもあります。
私は、すぐに売った方がいいと言いたいのではありません。
ただ、後回しになっている理由が何なのかは、一度見た方がいいと思っています。荷物なのか。気持ちなのか。兄弟姉妹に言い出せないことなのか。誰か任せになっていることなのか。そこが分からないままでは、いつまでも動きにくいままです。
寝屋川市や枚方市でご相談をお受けしていても、後回しになっている理由は、ご家族ごとに違います。
相続した実家をどうするか。これは、家だけの話ではありません。親の思い出。兄弟姉妹との距離感。お金の話への遠慮。荷物を片付ける気持ちの重さ。いろいろなものが重なっています。
だから、一気に結論を出す必要はありません。まずは、なぜ後回しになっているのかを整理すること。そこからでいいと思います。
売るかどうかを決める前に、家の中を見る。荷物の量を見る。家族の考えを聞く。誰が何をするのかを確認する。それだけでも、少し前に進むことがあります。
相続不動産は、放っておいても自然に片付くことはありません。誰かが悪いわけではない。でも、誰も動かなければ、何も変わりません。
親が残した家を、このまま後回しにしておくのか。それとも、少しずつ整理していくのか。その最初の一歩は、「売る」と決めることではなく、なぜ後回しになっているのかを知ることだと思います。
まだ何も決めていない段階でも大丈夫です。
今の実家がどうなっていて、どこで手が止まっているのか。そこを言葉にするところから、一緒に整理していけたらと思います。
