
久しぶりに実家の鍵を開ける。廊下には段ボールが積まれ、押し入れには布団が入ったまま。食器棚も、仏壇も、置かれたままになっている。
どこから手を付ければよいのか分からない。そのまま鍵を閉めて帰ってきた。そういうお話は、よく伺います。
引っ越し先へ持っていくものもあれば、処分したいものもある。ただ、荷物が多い。遠方に住んでいて、何度も現地へ行けないこともあります。
「家の中を空にしないと、不動産は売れないのでしょうか」
そのように聞かれることがあります。結論から言えば、荷物が残ったままでも、不動産の売却はできます。
ただし、荷物を残した状態で売り出すことと、何も決めずに荷物を残したまま買主へ引き渡すことは同じではありません。
誰が荷物を片付けるのか。処分費用を誰が負担するのか。引渡し時に荷物が残る場合、その荷物の所有権をどうするのか。
そこまで決めておく必要があります。
一般の方へ売却する場合は、売買契約を結んだあと、引渡しまでに売主側で荷物を撤去することが多くなります。買主は、その家に住むために購入します。家具や家電、衣類などが残っていれば、リフォームや引っ越しを始めることができません。
そのため、売買契約書に、
「売主の負担で、引渡しまでに残置物を撤去する」
という条件を入れることがあります。
この場合、売り出す時点や内覧の時点で、荷物が残っていても問題はありません。売買契約を結んだあと、引渡しまでに片付ければよいということです。
一方、不動産会社や買取業者へ売却する場合は、荷物を残したまま引き渡せることがあります。買取業者は、購入したあとに建物をリフォームしたり、解体したりして再販売します。その工事と一緒に、室内に残された荷物の処分まで行うことがあります。売主自身が片付けなくてもよいため、荷物が多い場合や、遠方に住んでいる場合には進めやすい方法です。
ただし、荷物の処分費用がなくなるわけではありません。
買取価格を決めるときに、荷物の撤去費用を見込んで、その分を差し引いていることがあります。例えば、荷物がない状態なら1,000万円で買い取れる物件でも、荷物の撤去に50万円かかると判断されれば、その費用を考慮した買取価格になることがあります。
「荷物を残したままでも売れる」と聞くと、無料で処分してもらえるように感じるかもしれません。実際には、売却価格の中で、処分費用を負担していることもあります。
そのため、自分で処分業者へ依頼した方がよいのか、荷物を残したまま買い取ってもらう方がよいのかは、処分費用と売却価格を比べて判断します。
任意売却の場合も、荷物が残ったまま引渡しになることが多くあります。住宅ローンの返済が難しくなっている状況では、売主が荷物の処分費用まで準備できないことがあります。引っ越しに必要なものだけを持ち出し、家具や家電、生活用品などを残したまま退去することもあります。
その場合は、売買契約書の特約で、残された動産類の扱いを明確にします。例えば、
「本物件建物内の残置動産類については、本物件の所有権移転時に、買主にその所有権も移転するものとする。従って、売主は、残置動産類の収去義務を負わない」
という内容を記載します。
この特約を入れることで、不動産の所有権が買主へ移るのと同時に、建物内に残された家具、家電、生活用品などの所有権も買主へ移ります。売主は、残された荷物を撤去する義務を負わず、その後の処分は買主が行うことになります。
大切なのは、「荷物はそのままで構いません」という口頭の話だけで終わらせないことです。
残された動産類の所有権を、いつ買主へ移すのか。売主が撤去義務を負わないこと。
そこまで売買契約書の特約に記載し、売主と買主が合意したうえで引渡しを行います。
荷物が少なく、自分たちで片付けられるのであれば、先に整理した方が売却しやすくなることがあります。室内が見やすくなり、買主も部屋の広さや建物の状態を確認しやすくなります。写真を撮る場合も、荷物が少ない方が室内の印象はよくなります。
反対に、家の中いっぱいに荷物があり、分別や搬出に時間と費用がかかる場合は、無理に先に片付けない方がよいこともあります。先に数十万円を支払って荷物を処分したあとで、建物を解体して土地として売ることになるかもしれません。その場合、室内の荷物を一つずつ分別して運び出すよりも、解体工事と一緒に処分した方が費用を抑えられることがあります。
売却方法が決まる前に、片付けだけを急ぐ必要はありません。
まず、建物をそのまま売るのか。リフォームを前提に売るのか。不動産会社に買い取ってもらうのか。解体して土地として売るのか。その方法が決まってから、荷物をどの段階で処分するのかを考えた方がよいと思います。
また、家の中にあるものを、すべて不用品として扱わないことも大切です。現金、通帳、印鑑、権利証、保険証券、写真、手紙、貴金属などが残っていることがあります。家具の引き出しや押し入れ、仏壇、古いかばんの中から、大切なものが見つかることもあります。
処分業者へ依頼する前に、残しておくものがないか、一度確認しておいた方がよいと思います。
所有者が一人ではない場合や、相続人が複数いる場合は、さらに注意が必要です。一人の判断で家財を処分すると、
「その家具は残しておきたかった」
「写真や形見を勝手に捨てられた」
という話になることがあります。処分する前に、誰が何を残すのか、処分してよいものは何かを確認しておく必要があります。
荷物が残っていても、不動産の査定はできます。先に家の中をすべて空にしなければ、査定を受けられないわけではありません。
まずは、荷物が残った状態で不動産会社に見てもらい、売却方法と処分費用を確認する。そのうえで、自分たちで片付けるのか、処分業者へ依頼するのか、荷物を残したまま引き渡すのかを決めます。
不動産を売るからといって、最初に家の中をすべて空にする必要はありません。
大切なのは、荷物を残したまま売れるかどうかだけではありません。誰が、いつ、どの費用で片付けるのか。荷物を残して引き渡す場合は、その動産類の所有権を、どの時点で誰へ移すのか。そこまで決めたうえで、売却を進めることだと思います。
寝屋川市や枚方市でも、荷物が残ったままの実家をどうするかというご相談は、よくいただきます。片付けが進んでいないことを気にされる方が多いのですが、責められることでは、ありません。
家の中がそのままの状態でも、ご相談いただけます。まず売却方法を整理してから、片付けの順番を決める。その進め方であれば、余計な費用をかけずに済むこともあります。
売ると決めていない段階でも大丈夫です。どの方法が向いているのかを一緒に確認するところから、始めていただけます。
