相続した実家をどうするか。ご家族で話していると、決まって出てくる言葉があります。
「3年以内に売れば、税金がかからないらしい」
たしかに、そういう制度はあります。ただ、その「3年以内」の数え方が、思っているのと少し違うことがあります。
相続した実家を売るとき、「3,000万円まで税金がかからない制度があるらしい」と聞いたことがある方は多いと思います。正式には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。要件を満たせば、売却で得た利益(譲渡所得)から最高3,000万円を差し引ける制度です。
ただ、「3年以内に売ればいい」くらいの理解で止まっている方も少なくありません。実際には、期限の数え方や、控除額そのものが、思っているのと違うことがあります。
まず、期限です。
「相続から3年以内」と言われることが多いのですが、正確には「相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」です。
例えば、2026年1月に相続が始まった場合、3年を経過する日は2029年1月ごろです。その日が属する年、つまり2029年12月31日が期限になります。相続開始から数えると、実際には4年近くの猶予があることになります。
一方、2026年12月に相続が始まった場合も、3年を経過する日が属する年は同じ2029年です。期限は同じ2029年12月31日ですが、相続開始からの期間で見ると、猶予は3年程度しかありません。
相続が始まった月が1月に近いか、12月に近いかで、実質的に使える期間の長さが変わってきます。
次に、控除額です。
以前は、相続人が何人いても、それぞれが最高3,000万円の控除を受けることができました。ところが、令和6年1月1日以後の譲渡からは、被相続人居住用家屋とその敷地等を相続または遺贈により取得した相続人が3人以上いる場合、一人あたりの控除額は最高2,000万円になります。
相続人が2人以下であれば、これまでどおり一人あたり最高3,000万円です。兄弟姉妹で分けて相続したようなケースでは、この人数の要件を見落とさないようにする必要があります。
耐震改修や取り壊しのタイミングについても、誤解が残っていることがあります。
この特例を使うには、家屋が一定の耐震基準を満たしている状態で売却するか、家屋を取り壊して敷地を売却することが基本です。以前は、売却する前に、売主自身が耐震改修や取り壊しを済ませておく必要がありました。
令和6年1月1日以後の譲渡からは、この要件が緩和されています。売却したあとでも、譲渡した年の翌年2月15日までに、買主によって耐震改修や取り壊しが行われた場合は、一定の要件のもとで特例の対象になります。
つまり、売却の前に自分で工事や解体を済ませておかなくても、この特例を使える余地が広がっています。
対象になる家屋にも条件があります。
昭和56年5月31日以前に建築されたこと。区分所有建物、いわゆるマンションではないこと。被相続人が、相続の直前に一人で住んでいたことです。
ただし、要介護認定などを受けて老人ホーム等に入所していた場合でも、一定の要件を満たせば対象になることがあります。老人ホームに入っていたからといって、最初から対象外だと決めつけない方がよいと思います。
譲渡価額が1億円を超える場合や、「特別の関係がある人」へ売却する場合も、この特例の対象外です。なお、「特別の関係がある人」には、親子や夫婦のほか、生計を一にする親族なども含まれます。
そして、制度自体にも期限があります。
この特例は、令和9年(2027年)12月31日までの譲渡が対象です。これまでも適用期限が延長されてきた経緯がありますが、今後どうなるかは、その時点の制度を確認する必要があります。
特例を受けるには、確定申告の際に「被相続人居住用家屋等確認書」を添付しなければなりません。この確認書は、家屋がある市区町村へ申請して交付を受けるものです。
市区町村での確認や必要書類の準備に時間がかかることもあるため、確定申告の直前ではなく、早めに申請しておいた方がよい書類です。
3,000万円という金額の大きさから、「使えるはず」と思い込んでしまいがちですが、期限の数え方、相続人の人数、家屋の要件など、確認しておくべき点は一つではありません。
とはいえ、これを全部ご自身で確かめないといけない、ということでもありません。
当社では、相続した空き家のご相談を受ける際、この特例が使えるかどうかも含めて、司法書士や税理士と連携しながら整理しています。制度の詳しい適用可否は、最終的に税理士の判断が必要になります。
売ると決めていない段階でも大丈夫です。
期限のある制度ですので、売却を考え始めた早い段階で、いまの状況と使えそうな制度を一度確認しておく。それだけでも、その後の進め方が見えてきます。
※この記事は2026年8月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の取り扱いについては、税務署・税理士にご確認ください。
