中古住宅の内覧で見ておきたい、雨漏りの跡と床の傾き

    内覧の日。案内された部屋を一通り見て、廊下を歩く。そのとき、足の裏がわずかに沈むように感じた。気のせいだろうか。そう思って、そのまま次の部屋へ進む。

    中古住宅の内覧では、こうした小さな引っかかりを、その場で流してしまうことがよくあります。

    見に行ったとき、最初に目に入るのは、間取りや室内のきれいさだと思います。キッチンが新しい。お風呂がきれい。壁紙も張り替えられている。そのような住宅を見ると、すぐに住めそうだと感じます。

    もちろん、室内の状態を確認することも大切です。ただ、中古住宅では、見た目のきれいさだけでは分からない部分があります。

    今回は、中古住宅を見るときに気を付けたいことの中から、雨漏りと床の傾きについて書いてみます。どちらも、購入してから気づくと、修理に大きな費用がかかることがあります。一般の方でも確認できることと、仲介業者や専門家に確認してもらった方がよいことを分けながら書いていきます。

    まず、雨漏りです。確認する一番簡単な方法は、室内の天井を見ることです。二階建ての住宅であれば、まず二階の天井を確認します。

    天井に、大きくにじんだような模様や、茶色く変色したシミがないかを見てください。そのような跡があれば、以前に雨漏りをしていた、または現在も雨漏りをしている可能性があります。

    ここで、雨漏りだと断言できないのは、別の原因も考えられるからです。天井裏に入った小動物のふんや尿によって、雨漏りと似たようなシミができることもあります。

    そのため、シミがあるから必ず雨漏りとは限りません。ただ、何らかの原因で天井に水分が回った跡である可能性はあります。シミを見つけた場合は、そのままにせず、売主や仲介業者に原因を確認した方がよいと思います。

    「この天井のシミは、何が原因ですか」

    「以前に雨漏りの修理をしたことはありますか」

    「修理をしたのであれば、いつ、どの部分を直しましたか」

    このように聞いてみてください。

    天井だけではなく、壁と天井が接している部分や、窓の周辺も確認します。雨水は、必ず雨漏りしている場所の真下に落ちてくるとは限りません。屋根や外壁から入った水が、柱や梁などを伝い、少し離れた場所にシミをつくることもあります。

    外から建物を見るときは、屋根も確認します。インスペクションでは、地上から屋根を確認するときに双眼鏡を使うことがあります。ただ、一般の方が内覧のために双眼鏡を準備する必要はありません。

    今は、スマートフォンのカメラでも屋根を拡大して見ることができます。建物から少し離れた安全な場所に立ち、画面を拡大しながら、瓦がずれていないか、割れていないか、一部だけ浮いていないかを確認してみてください。屋根材の一部だけ色が違う、波打って見える、棟の部分がずれているなど、周囲と違う部分がないかを見ることも一つの方法です。

    ただし、道路へ出たり、塀や脚立に上ったりして確認する必要はありません。地上から安全に見える範囲だけにしてください。

    また、スマートフォンで拡大しても、屋根の角度や隣接する建物の位置によって、見えない部分があります。画像が粗くなり、細かな割れやずれを正確に確認できないこともあります。

    見える部分に異常がないからといって、雨漏りがないとは言い切れません。気になる部分が見つかった場合は、その場で写真を残し、仲介業者に確認してもらうとよいと思います。

    また、売却前に天井や壁紙が張り替えられ、以前のシミが見えなくなっていることもあります。室内がきれいにリフォームされている住宅ほど、見た目だけで判断しないことが大切です。

    もう一つ気を付けたいのが、床の傾きです。テレビなどで、床にビー玉を置き、ビー玉が転がったら建物が傾いている、という場面を見ることがあります。

    しかし、床や建物の傾きは、そのような方法で判断するものではありません。

    ビー玉は、床の表面に少し凹凸があるだけでも転がります。フローリングの継ぎ目や床材の反り、施工したときのわずかな高低差によっても動きます。反対に、床が傾いていても、置いた場所や床の状態によっては、ビー玉が転がらないこともあります。ビー玉が転がったというだけで、建物が傾いているとは判断できません。

    床の傾きが大きい住宅では、室内を歩くだけでも違和感を覚えることがあります。人によって感じ方は違いますが、気持ちが悪くなったり、体が一定の方向へ持っていかれるように感じたりすることもあります。

    不動産会社の営業担当者が、建物の中でスリッパを脱いで歩くことがあります。スリッパを履いていると、床のわずかな高低差や沈み込みが分かりにくくなるためです。

    靴下のまま床をゆっくり歩くと、足の裏から違和感を感じることがあります。特に、部屋の端から端まで歩いたときに体が一方向へ流れるように感じる、床の一部が沈む、歩くと床が大きくたわむという場合は、仲介業者に伝えた方がよいと思います。

    ただし、歩いたときの感覚だけで、建物が傾いていると断定することはできません。感覚が敏感な方は早く気づくことがありますが、傾きがあっても、ほとんど感じない方もいます。

    違和感があった場合は、レーザーレベルなどを使って、実際の高低差を確認します。例えば、1メートルの距離で6ミリの高低差があれば、6/1,000の傾きです。3メートルの距離であれば、端と端で18ミリの高低差になります。

    一方、1メートルで3ミリ程度の差があったからといって、それだけで建物が傾いているとは言えません。

    木造住宅では、木材が乾燥して収縮することがあります。年数がたつことで木材が痩せ、床の一部が下がることもあります。床を張った大工の施工精度によって、部屋の一部に高低差が生じていることもあります。

    床が水平ではないことと、建物全体が傾いていることは、同じではありません。

    大切なのは、一か所だけを測って判断しないことです。部屋の中央、壁際、四隅など、場所を変えて測ります。さらに、隣の部屋や廊下でも、同じ方向に下がっているかを確認します。

    複数の部屋が同じ方向に傾いている場合は、床材だけの問題ではなく、床下の構造や基礎、地盤などに原因がある可能性も考えます。

    建物全体の傾きが疑われる場合は、床だけではなく、壁や柱の傾きも確認します。壁や柱については、下げ振りなどを使い、垂直になっているかを測ります。床が同じ方向に下がり、壁や柱にも同じ方向の傾きがある場合は、より詳しい確認が必要です。

    ただ、一般の方がレーザーレベルや下げ振りを持っていることは、ほとんどないと思います。

    内覧する物件が空き家であれば、内覧を申し込むときに、仲介業者へ床の傾きを確認したいと伝えておく方法があります。

    「床の傾きが気になるので、レーザーレベルなどで確認してもらえますか」

    このように、事前に聞いてみてください。不動産会社がレーザーレベルを持っていれば、内覧時に持参してもらえることがあります。ただし、すべての不動産会社が測定道具を持っているわけではありません。不動産会社や営業担当者によって、建物確認に関する知識や、対応できる範囲も異なります。

    測ってもらえない場合や、実際に歩いて強い違和感がある場合は、インスペクターや建築士などに確認を依頼する方法もあります。

    床や壁の傾きが気になる場合は、建物の外側も確認します。特に見ておきたいのが、外壁や基礎のひび割れです。

    ひび割れを見つけた場合は、クラックスケールを使うと、その幅を確認できます。クラックスケールは、太さの違う細い線が印刷された薄い板です。その線をひび割れに重ねることで、おおよその幅を測ります。

    ひび割れは、幅だけで判断するものではありません。どこに入っているか、縦なのか、横なのか、斜めなのか、どのくらいの長さなのか、ひび割れの両側に段差がないか。そのような点も一緒に確認します。

    細いひび割れが一本あるだけで、建物が傾いているとは判断できません。モルタルやコンクリートは、乾燥や温度変化によって、表面に細いひび割れが入ることがあります。

    一方で、基礎に大きなひび割れがある場合や、斜め方向に長く伸びている場合、ひび割れの左右に段差がある場合は、注意が必要です。

    床の傾きと、壁や柱の傾き、外壁や基礎のひび割れが同じ方向に現れている場合は、それぞれを別の問題として見るのではなく、関連している可能性を考えます。

    中古住宅を確認するときは、一つのシミや一つの数字だけで、建物の状態を断定しないことが大切です。

    天井にシミがあるから、必ず雨漏りをしている。ビー玉が転がったから、建物全体が傾いている。基礎にひび割れがあるから、危険な住宅である。そのように簡単に判断できるものではありません。

    反対に、天井にシミがないから雨漏りはない、床を歩いて違和感がないから傾きはない、とも言い切れません。目で見て分かることもありますが、見ただけでは分からないこともあります。

    中古住宅を買うときに必要なのは、不具合を一つも見逃さないことではありません。気になる部分を見つけたときに、そのままにせず、原因を確認することです。

    そのうえで、修理が必要なのか、修理費用はどのくらいかかるのか、その費用を含めても購入する住宅なのかを考えます。

    中古住宅は、新築住宅とは違います。年数がたっていれば、傷みや不具合があることは珍しくありません。大切なのは、不具合があるかないかだけではなく、その内容を知ったうえで購入を判断することだと思います。

    内覧の場ですべてを見抜けなかったとしても、責められることでは、ありません。専門の道具がなければ分からない部分は、確かにあります。

    気になった箇所は、その場で写真を撮っておくだけでも十分です。あとから確認してもらうときに役立ちます。この物件でよいのかどうか、まだ迷っている段階でも大丈夫です。見てきた住宅のどこが気になったのか、そこからお聞かせいただければ、次に何を確認すればよいのかを一緒に整理できます。

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