父が亡くなって、実家には母が一人で残っている。法事が一通り済んだあたりで、兄弟のあいだからこんな声が出ます。「あの家、どうする」。
気持ちとしては、自然な流れだと思います。ただ、私はこの場面で、家をどうするかよりも先に見ておきたいことがあると思っています。
残された親が、これからどう暮らしていくのか。まず、そこです。
相続の話になると、どうしても不動産をどうするかに目が向きます。売るのか。貸すのか。管理するのか。でも、夫婦のどちらか一人が亡くなり、片親がまだその家に住んでいる場合、最初に考えるべきことは、家をどうするかではないと思っています。
お父さんが亡くなった。でも、お母さんはまだその家に住んでいる。または、お母さんが亡くなった。でも、お父さんはまだその家に住んでいる。その時、子どもたちが先に考えるのは、自分たちの取り分ではなく、残された親のこれからの生活ではないでしょうか。
一人で生活できるのか。今の家で暮らし続けられるのか。買い物や病院はどうするのか。食事や掃除は一人でできるのか。何かあった時に、すぐ誰かが行けるのか。
ここを見ないまま、家の話だけを先に進めるのは、少し違うように思います。
長年住んできた家です。夫婦で暮らしてきた家。子どもたちを育ててきた家。毎日の生活があった家。だから、残された親が、できればこのまま住みたいと思うこともあります。その気持ちは、大切にした方がいいと思います。
ただ、年齢を重ねると、今まで普通に使っていた家が、少しずつ不便になることがあります。毎日使うキッチン。トイレ。お風呂。洗面所。玄関の土間。廊下。階段。若い頃は何ともなかった段差が、年齢を重ねると負担になります。
玄関の上がり框でつまずく。お風呂に入る時に足元が不安になる。トイレで立ち上がる時に力がいる。階段の上り下りがしんどくなる。夜中にトイレへ行く時、廊下が暗くて不安になる。
こういうことは、実際の生活の中で出てきます。
その時に、手すりを付けた方がいいのか。段差を少なくした方がいいのか。トイレやお風呂を使いやすくした方がいいのか。キッチンまわりを見直した方がいいのか。一人でも生活しやすいように、改装工事を考えた方がいいのか。ここも、大切な判断になります。
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相続不動産というと、すぐに売却や名義の話になりがちです。でも、片親がまだその家で暮らしているなら、まず考えるのは、その家で安全に暮らせるのかということです。
今の家で一人暮らしを続けるのか。子どもの誰かと同居するのか。老人ホームや施設を考えるのか。近くに住む子どもが、定期的に様子を見に行くのか。まず、その方向を家族で考えることが大切です。
もちろん、簡単に決められる話ではありません。親本人は、まだ大丈夫と言うかもしれません。でも、子どもは本当は心配している。
一緒に住むとなると、自分たちの生活も変わります。老人ホームに入るとなると、費用のことも考えないといけません。今の家で暮らし続けるなら、家の安全や管理のことも見ておかないといけません。
ここには、家族それぞれの事情があります。だからこそ、不動産の話だけを先にしても、うまく進まないのだと思います。
残された親が、今の家で暮らし続けるなら、その家をどう住みやすくするのか。家の段差。階段。お風呂。トイレ。水まわり。庭の管理。固定資産税。これからの生活費。そういうことを、少しずつ見ておく必要があります。
もし、少し手を入れることで、安心して暮らせるのであれば、改装工事という選択もあります。手すりを付ける。段差を少なくする。浴室を使いやすくする。トイレを立ち上がりやすくする。玄関まわりを安全にする。階段に手すりを付ける。大きな工事でなくても、暮らしやすさが変わることがあります。
私は不動産の売買だけではなく、リフォーム工事や改装工事の相談も受けています。だから、家を売るかどうかだけではなく、今の家に住み続けるために何が必要なのかも、一緒に見ることができます。
このまま暮らせるのか。少し手を入れれば暮らしやすくなるのか。大きな工事が必要なのか。それとも、今後のことを考えると、別の暮らし方を考えた方がいいのか。そこを整理することも、相続不動産の大切な相談だと思っています。
寝屋川市や枚方市でも、ご実家に片親が残られた形のご相談をお受けします。まずは家の中を見せていただいて、どこが使いにくくなっているのかを一緒に確認するところから始めることもあります。
そして、もし老人ホームや施設に入ることになれば、その家は空き家になります。子どもと同居することになって、親が家を出る場合も同じです。その時に、初めて家の具体的な話が出てきます。
そのまま管理するのか。荷物を片付けるのか。誰かに管理を依頼するのか。貸すことができるのか。売却を考えるのか。
順番としては、先に家をどうするかではありません。先に、残された親がどう暮らすのか。その暮らし方が見えてきてから、家のことを考える。
この順番が大切だと思います。
相続は、子どもたちの分け方だけの話ではありません。残された親の暮らしをどう守るのか。そして、その暮らし方に合わせて、家をどう扱うのか。そこから考える相続があっていいと思います。
片親がまだ元気に暮らしているなら、まずその暮らしを大切にする。一人暮らしが難しくなってきたなら、次の生活を考える。今の家で暮らすなら、安全に暮らせるように整える。家が空くなら、管理、賃貸、売却を現実的に考える。この順番です。
家を売るかどうかは、最初に決めることではありません。残された親が、これからどう暮らすのか。そこを整理することで、家の方向性も見えてくるのだと思います。
慌てなくて大丈夫です。今日決めなければいけないことは、ほとんどありません。
家のこと、親の一人暮らしの不安、改装のこと、家が空いた後の管理や活用のこと。どれから手を付ければいいのか分からない、という段階でのご相談でも構いません。売る前提でお話しすることはありません。まずはご本人の暮らしと家の状態を確認して、順番を整えるところから、一緒に考えます。
