家を探している方から、「未公開物件はありますか」と聞かれることがあります。
ネットに出ていない物件を、先に見せてもらえるのではないか。そう思われるのは自然なことだと思います。未公開という言葉には、自分だけに紹介される特別な物件、という響きがあります。
ただ、実務をしている側から見ると、この言葉には少し補足が必要です。すべての未公開物件が、特別な物件とは限らないからです。
表に出ていないのには、いろいろな理由があります。売主の事情で広告を出せない。近隣に売却を知られたくない。媒介を取得した直後で、まだ販売準備が整っていない。売主が広告そのものを望んでいない。そういう物件が、たまたま今、表に出ていないだけ、ということも多いのです。
未公開というのは、物件の質を表す言葉ではありません。単に、今の時点で広告に出ていない、という状態を指しているだけです。
もちろん、条件の良い物件が、表に出る前に決まっていくことはあります。動きの早い物件が水面下で進むのも事実です。それを否定するつもりはありません。
ただ、未公開だから良い物件、ということではありません。未公開かどうかと、その物件が良いかどうかは、別の話です。
本当に大事なのは、未公開かどうかではありません。
その物件が、そのお客様に合うかどうかです。
価格は予算に合っているか。場所は生活に合っているか。建物の状態はどうか。資金計画は無理がないか。引渡しの条件はどうなっているか。住んでからの暮らしやすさはどうか。そこを説明できるかどうかが、営業の仕事だと思っています。未公開という言葉は、そのどれも説明していません。
気になるのは、ここからです。
物件の中身を十分に説明する前に、未公開です、水面下の物件です、特別にご紹介できます、という言葉が先に出てしまうことがあります。
広告に出ていない物件があること自体は、あります。売主の事情で表に出せない物件もありますし、販売準備中の物件もあります。ただ、その言葉だけが前に出ると、聞いた側は、特別な物件なのではないかと受け取ります。
本来見るべきなのは、未公開かどうかではなく、価格、場所、建物の状態、資金計画、引渡し条件です。そこを説明する前に、未公開、水面下、特別に、という言葉で関心を引いてしまうと、物件の中身よりも、言葉の期待感が先に立ってしまいます。
目の前の物件について、価格の根拠を説明できる。周辺環境の良し悪しを、正直に伝えられる。建物の弱いところも隠さず話せる。資金計画に一緒に向き合える。
そういう営業であれば、わざわざ未公開という言葉を前に出さなくても、物件の中身で話ができます。
逆に、説明する中身が薄いと、言葉で引きつける形になりやすいのだと思います。未公開物件があります、という一言は、中身を説明しなくても、関心を引くことがあります。だからこそ、使い方には注意が必要です。
でも、それでお客様を引きつけても、次が続きません。未公開という言葉で来ていただいても、結局は物件を見て、条件を聞いて、判断されます。そのときに説明できなければ、意味がありません。言葉で入口を作っても、中身がなければ、そこで止まります。
これは、自分への戒めも込めて書いています。
物件が動かないとき、反響が薄いとき、つい強い言葉を使いたくなります。特別に。今だけ。表に出る前に。そういう言葉は、たしかに関心を引きます。でも、それに頼り始めると、肝心の説明がおろそかになります。
大事なのは、言葉ではなく中身です。
今ある物件を、正直に、きちんと説明できるか。良いところも、良くないところも伝えられるか。そのお客様にとって、この物件がどうなのかを、一緒に考えられるか。
そこができていれば、未公開という言葉に頼る必要はありません。そこができていなければ、どんな言葉を使っても、長くは続きません。
未公開物件があるかどうかより、目の前の物件を説明できるかどうか。
未公開という言葉は、物件の良し悪しを表しません。表しているのは、それを扱う営業の中身です。
ですから、家探しの途中で未公開という言葉を聞いたときは、そこで期待をふくらませるのではなく、その物件の価格の根拠や建物の状態を聞いてみてください。返ってくる答えで、だいぶ見えてきます。細かいことを聞くのは、遠慮されなくて大丈夫です。
今見ている物件について、どこを確認しておけばよいか分からないときは、資料を見ながら一緒に整理することもできます。まだ買うと決めていない段階でも大丈夫です。
