土地の境界が1ミリで揉める理由。売却前に確認しておきたいこと

    隣との塀の位置を測ってみたら、昔から聞いていた話と少し違っていた。数ミリの話です。それでも、その場の空気は変わります。

    不動産の仕事をしていると、境界のことで揉める場面があります。隣との境界がどこなのか。ブロック塀はどちらのものなのか。境界標は正しい位置にあるのか。昔から聞いていた話と、測量の結果が違う。こういうことは、現場では珍しくありません。

    そして時には、1ミリ、5ミリの違いで、強い言い合いになることもあります。

    外から見れば、「そんな少しのことで」と思うかもしれません。でも、当事者にとっては、その1ミリがとても大きいのです。

    なぜか。それは、境界が単なる線ではないからです。

    境界は、自分の土地と相手の土地を分ける線です。言い換えれば、自分の権利がどこまであるのかを示す線です。だから、少しでも違うと言われると、自分の権利を削られるように感じる人がいます。

    昔からここまでがうちの土地だと思っていた。親からそう聞いていた。今さら違うと言われても納得できない。相手に少しでも取られるようで嫌だ。こういう感情が出てきます。

    もちろん、測量には測量の根拠があります。図面があります。境界標があります。過去の資料があります。隣地所有者との確認も必要です。

    でも、資料や数字だけでは、人の感情は簡単には収まりません。

    特に長年住んでいる土地では、境界は生活の一部になっています。この塀までがうち。この溝までがうち。この木のあたりまでがうち。昔からそう思って使ってきた。その感覚がある中で、「実は少し違います」と言われると、受け入れにくいものです。

    これは、単に面積の問題ではありません。自分が今まで信じてきたことを、否定されたように感じるのです。

    だから、境界の問題は難しい。たとえ実際の面積としてはわずかでも、本人の中では、譲った、取られた、損をした、という感覚になることがあります。

    ここに、不動産の本質があります。不動産は、土地や建物という形のあるものです。けれど、そこには必ず、人の権利が重なっています。そして権利には、感情がついてきます。

    だから、境界は数字だけでは片づきません。

    では、境界の問題にどう向き合えばいいのか。まず大切なのは、感情だけで判断しないことです。

    昔からそうだった。親からそう聞いていた。うちはここまで使ってきた。これらは、本人にとって大切な話です。でも、それだけでは、売買や相続の場面では通らないことがあります。

    必要になるのは、資料です。測量です。隣地所有者との確認です。過去の図面。境界標の有無。ブロック塀や側溝の位置。これまでの利用状況。隣地の方がどう認識しているのか。そういうものを一つずつ確認していく必要があります。

    そしてもう一つ大切なのは、相手を最初から敵にしないことです。

    境界を確認する相手は、多くの場合、隣地の所有者です。つまり、話が終わった後も、隣同士の関係が続く相手です。だから、こちらが正しい、そちらが間違っている、という形でぶつかると、話が余計に進みにくくなることがあります。

    もちろん、自分の権利を守ることは大切です。でも、権利を守ることと、相手を追い詰めることは違います。

    境界の問題では、正しい資料を確認しながら、相手の話も聞く。この姿勢がとても大事になります。

    不動産を売却する時にも、境界の問題は避けて通れません。買う側からすれば、境界がはっきりしていない土地は不安です。あとで隣と揉めるかもしれない。どこまでが自分の土地なのか分からない。建て替えや工事の時に問題になるかもしれない。そう考えると、買主は慎重になります。

    売主からすれば、昔からこの状態で使ってきた、今まで問題はなかった、と思うかもしれません。でも、売買となると、そこを曖昧にしたまま進めることは難しい。今まで何となく済んでいたことが、売却の場面で表に出てくるのです。

    だから私は、境界の問題は早い段階で確認しておく方がいいと思っています。売ると決めてから慌てるのではなく、少しでも不安があるなら、早めに状況を把握しておく。それだけでも、後のトラブルを減らせることがあります。

    寝屋川市や枚方市のように住宅が建て込んだ地域では、塀一枚を隔てて長くお付き合いが続いていることも多く、なおさら丁寧に進めたい場面です。

    境界の問題は、1ミリ、5ミリの話に見えます。でも実際には、権利と感情の話です。だから揉めるのです。

    そして、この感情の問題は、境界だけに限りません。相続になると、そこに家族の歴史が乗ってきます。誰が親のそばにいたのか。誰が実家を守ってきたのか。誰が遠方にいて動けなかったのか。不動産をきっかけに、それまで表に出ていなかった感情が出てくることがあります。

    境界でさえ、これだけ人の感情が動きます。まして相続となれば、話はもっと複雑になります。そこには、土地や建物だけではなく、家族それぞれの思いが乗ってくるからです。

    境界のことが気になっていても、今すぐ何かが起きているわけではない、という方もおられます。慌てなくて大丈夫です。

    ただ、境界の確認には測量や隣地の方との話し合いが必要で、時間のかかることもあります。図面が見つからない。境界標がどこにあるのか分からない。隣の方にどう話せばいいのか分からない。そんな段階でのご相談でも構いません。まずは手元の資料と現地の状況を一緒に見て、どこから確認すればいいのかを整理していきます。

    ※この記事は2026年9月時点の情報をもとにしています。制度の詳細や個別の取り扱いについては、土地家屋調査士などの専門家にご確認ください。

    お問い合わせ・無料相談はこちら