三社に査定をお願いした方が、手元のメモを見ながら困っておられました。一社目は、更地にした方が売れやすいですと言う。二社目は、今のまま売りに出しましょうと言う。三社目は、少しリフォームすれば売れやすくなりますと言う。
別のところでは、早めに価格を下げた方がいい、うちで買い取りましょう、という話にもなったそうです。
同じ物件を見ているのに、なぜここまで提案が変わるのか。そう思われるのは、当然だと思います。
でも実際、理由は一つではありません。会社ごとに、得意分野が違い、利益の取り方が違い、付き合いのある取引先が違い、考え方も違うからです。
例えば、解体業者との繋がりが強い会社は、更地にした方が動きやすい場合があります。リフォーム部門を持っている会社なら、手を入れて販売する提案をすることもあります。早く回転させたい会社なら、値下げや買取の方向へ進めるケースもあります。どの提案にも、その会社なりの理由があります。
もちろん、全部が悪いという話ではありません。実際、更地にした方が売れやすい土地もあります。建物の状態によっては、解体した方が良いケースもあります。逆に、古くても、そのまま利用したい買主さんが見つかることもあります。
つまり、正解は一つではありません。物件によって違う。地域によって違う。タイミングによっても違う。売主さんの事情によっても変わります。
私の事務所がある寝屋川のあたりでも、近い場所にある似たような家で、会社ごとに違う提案が出ることがあります。
ただ、現場を長く見ていると、本当にそこまで必要だったのかと思うケースに出会うことがあります。
まだ十分使えそうな建物が、古いからという理由だけで解体されていたケース。問い合わせも入っていたのに、今のうちに価格を下げた方がいいですという流れで、急いで値下げしてしまったケース。
逆に、早く動いた方が良かったケースもあります。更地にしたことで売れたケースもあります。価格の調整が必要だったケースもあります。だから、どれが正しいとは、一概には言えません。
ただ、売主さん側が、業者に言われたからという理由だけで進めてしまうと、後になって、そのままでも売れたのではないか、となることもあります。
昔は、リフォーム渡しという売り方もよくありました。
これは、売主さんが住んでいる状態で室内を見てもらい、購入申し込みが入ったあと、先に決済を終わらせ、その後にリフォーム工事を行って引き渡す形です。つまり買主さんは、完成後の部屋を見ずに契約しているケースも多かったわけです。そのため、どこまで工事をするのかについて、売主側の認識と買主側の認識が、必ずしも一致していないこともありました。
さらに、売主さんにはリフォーム費用は50万円ぐらい必要ですと説明しながら、実際には畳の表替えと簡単なクリーニング程度しか行われていなかった、というケースもありました。
もちろん、全ての業者がそうだという話ではありません。ただ、解体工事やリフォーム工事を入れることで、仲介以外の利益が発生する構造があるのも事実です。
だから私は、なぜその提案なのかを、売主さん自身も考えることが大切だと思っています。
なぜ更地にするのか。なぜ価格を下げるのか。なぜ今すぐ動くのか。なぜリフォームを入れるのか。
ここを聞くと、その会社がどこを見ているのかが、少し見えてきます。すぐに答えが返ってこないようであれば、その提案はいったん預かっておけばいいと思います。
不動産は、一度動き出すと、そのまま流れていきやすいところがあります。解体してしまえば戻せませんし、価格を下げれば、元の価格には戻りません。
提案の内容そのものよりも、その理由がご自身の事情と合っているかどうか。そこを確かめてから動いても、遅くはありません。慌てなくて大丈夫です。
複数の会社から違う話をされて迷っている、という段階でも構いません。どの提案を選ぶかという話の前に、そもそも何のために売るのか、そこから一緒に整理していきます。
